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    2021年7月28日 台湾アカデミー賞3部門受賞映画『親愛なる君へ』

     家族とは、愛とは――。

     亡き同性パートナーの遺した息子と、その母親への愛の形を描く映画『親愛なる君へ』。今作は『一年之初』『ヤンヤン』などを手掛けたチェン・ヨウチェ監督が5年ぶりに監督を務め、主演のモー・ズーイーが、第57回台湾アカデミー賞(金馬奨)最優秀主演男優賞をはじめ、数多くの賞を受賞した話題作だ。

    © 2020 FiLMOSA Production All rights
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     老婦・シウユーの介護をしながら、その孫のヨウユーの面倒を見る青年・ジエンイー。すべての家事を担当し、生活費も彼が出しているが、決して食卓を一緒に囲むことはない。なぜ、他人にそこまで尽くしているのかというと、その2人が、心底愛した、今は亡き同性パートナーの家族だったからだ。

    © 2020 FiLMOSA Production All rights
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     しかし、ある日療養中だったシウユーが亡くなったことで、疑いの目がジエンイーに。警察にも、なぜパートナーが死んだ後もそこに居続けるのか?と問いただされてしまう。しかし、ジエンイーは、真っ直ぐに警察の目を見てこう答えるのだ。「僕が女性でも、同じ質問をしますか?」と。

     穏やかに、静かに、シウユーと、ヨウユーを守り、パートナーの分も愛し続けてきたジエンイー。しかし、同性愛者への偏見のせいで、“もう1人のパパ”として強い絆を築き上げてきたヨウユーとも離れ離れにさせられてしまう。

    © 2020 FiLMOSA Production All rights

     シウユーとヨウユー、2人の愛する家族を守るために、静かに罪を受け入れようとするジエンイー。しかし、次第にこの家族の過去が開示されていくと、そこに血の繋がりを超えた極限の愛を感じ、心がふるえるはずだ。

    © 2020 FiLMOSA Production All rights

     今作の予告編で、ジエンイーがヨウユーに対して「これからたくさんの嫌なことや理不尽なことに出会うだろう。でも覚えていてくれ。永遠にお前を愛してる」と訴えかけるシーンが残されている。この言葉を証明するかのような彼らのエピソードに、家族とは、愛とは何なのか?ということを考えさせられるはずだ。

    © 2020 FiLMOSA Production All rights

     さらに今作の素晴らしいところは、登場人物すべてが本当に人間らしく、良い面も、そして目を伏せたくなるような悪い面も、両面がしっかりと描かれているということ。愛するが故の裏切りや、不信感、さらに素直になれずにぶつけてしまう暴言や、手を出してはいけないと分かっていてもすがってしまう弱さなどが、とても繊細に、そしてしっかりと描かれているのだ。しかもそれらは、誰もが“自分でもその状況になってしまったら、そうしていたかもしれない”というような一線を飛び越えた行為。だからこそ、ただの感動作では終わらず、観た人の心の奥までを刺激するのだろう。(Text → 吉田可奈)

     『親愛なる君へ』は、7月23日から東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋ほか、全国で順次公開中。

    主演 モー・ズーイーからのスペシャルメッセージ動画
    © 2020 FiLMOSA Production All rights

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    【MOVIE Information】

    © 2020 FiLMOSA Production All rights

    親愛なる君へ

    シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開中


    原題:親愛的房客
    ※R18+作品
    監督/脚本:チェン・ヨウジエ
    監修:ヤン・ヤーチェ
    出演:モー・ズーイー、ヤオ・チュエンヤオ、チェン・シューファン、バイ・ルンイン
    配給:エスピーオー、フィルモット
    © 2020 FiLMOSA Production All rights

    公式ウェブサイト:filmott.com/shin-ai  
    公式Twitter:@filmott  

    【STORY】
    君が生きていてくれたら… 僕はただ、大好きな君を守りたかった ──

     老婦・シウユーの介護と、その孫のヨウユーの面倒をひとりで見る青年・ジエンイー。血のつながりもなく、ただの間借り人のはずのジエンイーがそこまで尽くすのは、ふたりが今は亡き同性パートナーの家族だからだ。彼が暮らした家で生活し、彼が愛した家族を愛することが、ジエンイーにとって彼を想い続け、自分の人生の中で彼が生き続ける唯一の方法であり、彼への何よりの弔いになると感じていたからだ。しかしある日、シウユーが急死してしまう。病気の療養中だったとはいえ、その死因を巡り、ジエンイーは周囲から不審の目で見られるようになる。警察の捜査によって不利な証拠が次々に見つかり、終いには裁判にかけられてしまう。だが弁解は一切せずに、なすがままに罪を受け入れようとするジエンイー。それはすべて、愛する“家族”を守りたい一心で選択したことだった…