公開中の映画『卍 リバース』は、昭和の文豪・谷崎潤一郎による小説「卍」を現代の設定と解釈で立ち上げた作品になっている。本作で、画家になる夢を捨てられず、脱サラして美術学校に通う主人公、園田を演じているのが鈴木志遠。妻がありながら美術学校で出会った男性と恋に落ちるという難役に挑んだ鈴木に話を聞いた。
■今作に挑むにあたって、園田という男をどう理解して演じていきましたか?
「今回オーディションで選んでいただいたんですけど、男性を愛する役は経験したことがなかったので、最初はどう役作りをすればいいのかが全然掴めなくて。でも自分なりに考えた時に、結局人を愛することに対して、男性、女性と深く考えすぎていたのかなと。シンプルに人を愛することだけを考えてみたら、役への理解が深まっていきました」
■それにしても園田は身勝手で、なかなか理解し難い人物ですよね(笑)。
「確かに家族がいるのに脱サラして、美容学校へ行くっていうのはね(笑)」
■それでも働いて自身を支えてくれる寛容な奥さんがいるのに、浮気する!?って(笑)。
「(笑)確かにすごく自分本位ですけど、逆に自分は本当にやりたいことに突き進めるなんて羨ましいなと思いました。自分はそうはなれないので」
■原作は読みましたか?
「読みましたけど、めちゃくちゃ難しかったです。結構本を読むほうなんですけど、文学作品はあまり読んでこなかったし、谷崎潤一郎作品にも触れたことがなかったので」
■普段はどんな本を読んでいますか?
「特に好きな作家さんがいるわけじゃなくて、本屋に行って書店員さんのレビューを見たり、ネットのレビューを参考に面白そうな本を買って、良かったらもう一冊その人の本を買うことが多いです。でも年齢を重ねるにつれて趣味が変わってきて、最近は小説よりもビジネス書や自己啓発本を選ぶようになってきました。株の本とかを読んでますね(笑)」
■実用書のほうがすぐに役立ちますしね(笑)。私も『卍』を読んだのですが、大阪弁の口語体だし、描写も細かいので妙なリアリティがあって、グッと惹き込まれました。
「確かに情景描写とか、リアルさを追求して書いているなと思いました」
■それにしても劇中の園田は流されやすい人だと感じました。共感はできましたか?
「最初は僕も正直、頼りないやつだなと思ったんですけど、好きなものに対して追求する想いの強さがあるんですよね。美術学校もそうだけど、光(門間航)に対しての想いとか。その一方で洗脳されやすい、流されやすいという二面性を持っているのかなと思います」
■園田夫婦を含めた男女四人のやり取りが多いですが、鈴木さんは接する相手によって違った気持ちで向き合うことを意識されたそうですね。誰とのシーンに一番苦労しましたか?
「僕は全員と絡むのですが、妻の弥生(中﨑絵梨奈)に対しては、申し訳なさから感情を作りづらかったですね。それと台詞自体はあまりないので、全シーン、リアクションの演技が難しくて。それぞれ相手の感情をどうやったら上手く引き出せるかを考えながら演じました」
■特に感情移入が難しかったところはどこですか。
「園田は精神病院にいるんですけど、精神病を患うまでの変化ですね。そこをどうすればいいのかを監督に尋ねた時に、役者がよく殺人鬼がやりたいとか、病んだ役がやりたいとか言うけど普通の役のほうが難しいし、病んだ役のほうが意外と演じやすいって言われたんです。でも普通ってなんだろうと思って、撮影に入る前に精神分析学的なところで洋画『シャッターアイランド』を観たり、美術作品を参考にしつつ、精神を患った方がどんな行動をするのかを調べました。実体験がないからこその難しさもあったんですけど、園田の(精神病を患う前後の)コントラストをどう付けていくかに注力して演じました」
■今作では男女が逆転したり、時代が現代になっていたり、小説との違いもあります。
「小説では、夫がいる身でありながら、妻が女性と恋に落ちる設定なんですけど、それが逆転したことで物語の見え方が変わってくるのは面白いです。人の出会いでそれぞれの人生が左右されるんですけど、人との出会いで人生が変わることって、現実でもあって。園田達ははたから見たら悪い方向に進んでいるけど、人生を楽しんでいるようにも見えて。それは本当に幸せなのかとか、結局のところ自分が幸せならいいのかとか、いろいろ考えさせられました。幸せの定義も難しいですけど、試写を観た時にそんなに落ちる映画ではないと思ったんです。最近は観やすい映画も多くて、僕はそれも好きですけど、今作のように考えさせられる作品もまた良いのかなと思います。小説と照らし合わせて観てもらってもまた違う楽しみ方ができる作品なので、ぜひご覧いただきたいです」
■ところで、“卍”はもともと仏教の印ですが、現代では「まじ卍(まんじ)」のように“良し悪しを問わず非常に気分が高まっている状態”に使われるそうで(笑)。最近卍を感じた瞬間はありますか?
「基本インドア派なので自炊したり、中国語を勉強している時が最近の卍な瞬間です(笑)」
■自炊はどんなものを作りますか。
「昔はパスタとか簡単なものだったのが、最近は肉料理も増えてきました。肉と野菜を炒めるだけですけど、そこにちょっとアレンジを加えています。例えば鶏胸肉が苦手だったんですけど、柔らかくする調理法を調べて、塩麹に浸けたり、繊維を断つように切ったら柔らかくて美味しくなりました」
■中国語はいつ頃から始めたんですか?
「僕は身長が高いのでアジアでも活動できないかなと思って、去年から中国語を勉強し始めました。REDという中国のインスタみたいなアプリがあって、そこから日本の良さを中国語で発信したりしています。まだそんなに喋れないので中国語を喋れる方にチェックしてもらったりしていているんですけど、ちょっとずつ中国の方にも認知してもらえてきたのでこれからも頑張りたいです」
■最後に、2024年下半期の目標をお聞かせください。
「去年は仕事のことで悩んでいたんです。というのも僕、この業界にいるのにめちゃくちゃ前に出ないタイプで(苦笑)。だから自分には個性がないって悩んで、マネージャーさんとも話し合って、もう無理かもと思った時期もありました。でもそれも個性と思えるようになってきて、そのなかでこの映画のお仕事がきたんです。だから全身全霊で挑めたし、今年はスッキリした気持ちで他の作品にも向き合えているので、下半期もこのままいきたいです」
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【共通テーマ音楽コラム「あなたにとってのルーツソング」】
Mr.Children「終わりなき旅」
僕、大学を浪人しているんですけど、その頃にめっちゃ聴いていました。浪人中なのに “終わりなき旅”って縁起が良くないのかもしれないけど(笑)。聴くと染みるというか、頑張ろうっていう気になりましたね。浪人時代はSNSも辞めていたんですけど、ラジオが好きなので、(塾の)帰り道にラジオや音楽を聴いて元気をもらっていました。
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【プロフィール】
鈴木志遠(すずきしおん)
1997年2月1日生まれ。東京都出身。主な出演作は、映画『ヘタな二人の恋の話』『世界の終わりから』、演劇ユニット「羽原組」旗揚げ公演『DOWNTOWN STORY』、ドラマ「オールドルーキー」「もしも、イケメンだけの高校があったら」、Netflix『テラスハウス TOKYO2019-2020』、ABEMA TV『恋愛ドラマな恋がしたい~Kiss me like a princess~』など。
公式HP
https://www.ohtapro.co.jp/talent/suzukishion.html
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【MOVIE INFORMATION】
映画『卍リバース』
5月24日(金)シネマート新宿、シネマロサ他全国順次公開
公式HP
監督:宝来忠昭
脚本:宝来忠昭 藤村聖子
出演者:鈴木志遠 門間航 中崎絵梨奈 田中珠里 手島アリサ 真田和輝 小野寛之 オオエベン / 斉藤陽一郎
©2024「卍リバース」パートナーズ
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【クレジット】
Photo コザイリサ
Text 花倉有紀子
Hair&Make-up 河本花葉
Styling 清水拓郎
Costume ジャケット、パンツ/MAISON SPECIAL
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