2024.8.12 東京・よみうり大手町ホール
ライヴ中、YUは何度感謝を口にしただろう。集まってくれた観客はもちろん、いつも支えてくれるスタッフ、そして今日一緒にステージで演奏する自慢のメンバーに。
『YU Debut 4th Anniversary Live Event〜THIS IS YU〜in TOKYO』。YUのデビュー4周年を祝う気満々のファンと、感謝の気持ちを音楽でお返しする覚悟のYU、よみうり大手町ホールは終始、やさしい熱気で満ち溢れていた。
オープニングナンバーはこのライヴのために用意した新曲「弱虫」。ドラマチックなロックサウンドの中心で振り絞るように放たれる〈優しさはそのままで 悔しさも抱き締めたまま 光さす向こうへ羽ばたいてゆくよ〉というフレーズは、YUの決意そのものだった。弱さや強さや喜びや迷いや葛藤を積み重ねて辿り着いた4周年は、通過点であり、新たなスタート地点なのだ。
間髪入れずに披露した「夢中」では勢い余って歌詞がふっ飛ぶアクシデントが! ただこういう出来事は会場をギュッとひとつにまとめるもので。バンドメンバーのアグレッシヴな演奏と今日一番の観客のクラップがYUを後押しする。中盤から持ち直して完走した瞬間、湧き上がった大歓声と「もう一回」コールに照れ笑い。スッと顔を引き締めて再度歌い始め、再度歌詞が飛んで、「あ、あかんな」って大笑い。「1回もミスったことにないのに……」なんて本気で悔しがる。このクルクル変わる表情もまたライヴの醍醐味だ。とは言え、次の曲が「梅雨のち晴れ」というのはちょっと出来すぎている。
「僕が初めて東京に長く滞在した時に書いた曲で、今でも聴いたりします」
続く「アシアト」の曲紹介を日本語と中国語で。美しいメロディと夕焼けみたいなオレンジ色の照明が混ざり合い、どうしようもない不安と震える勇気を響かせる。〈今は最後の涙に身を任せて〉で頬に添えた手のひら、〈芽吹いたこの気持ちで照らさなくちゃ〉と歌うまっすぐな強い視線など、振り付けではない繊細な表現はつくづく俳優の歌だなぁと思う。
今回のライヴにも参加している杉本雄治(G)とイチから作り上げたスローバラード「remembering」の曲紹介は、日本語と英語で。人の記憶って消えることはなく、ずっと寄り添い続けてくれる。英語で綴られた歌詞は、透明感溢れるファルセットに愛おしく柔らかな地声をミックスさせながら、それでもやっぱりヴォーカルだけでなく全身で、YUは曲に込めた想いを、自分だけの音楽を、届ける。
おなじみの荘口彰久さんを迎えてのMCコーナーでは、4周年を迎えられたことへの感謝の言葉から始まり、「合図をきっかけにステージへ出てみたら、聴いたことない音楽が流れてきて踊ってごまかした」などという世にもかわいい悪夢話を経由して、「remembering」の英詞に込めたグローバルな活動への情熱、「弱虫」で描きたかったヒーロー像解説、さらにこの2曲の新曲の制作風景&リリックビデオのメイキング映像をYU越しに観て、本人から直接秘話を聞くという濃密さ。ちなみに「弱虫」のビデオに登場する付箋と紙吹雪のシーンは、撮影前日にYUが思いついたアイデアだったそう。
最後に、9月22日20時にこの4周年イベントがライヴ配信されることを発表したら、後半戦へ。
カバー曲をみんなに決めてもらう試みで、候補曲3曲の中から圧倒的な拍手の数で選ばれた中西保志の「最後の雨」。
〈本気で忘れるくらいなら 泣けるほど愛したりしない〉
色褪せることなく歌い継がれる切なくも狂おしい恋心が、30年の時を経て「remembering」と響き合い、繋がっていくような不思議な感覚になったのは、私だけではなかったと思う。
もう1曲用意したカバー曲・RADWIMPSの「バイ・マイ・サイ」は、日本に拠点を移したことで少しだけ距離が離れてしまった台湾のファンに、SNSを通じて自分の音楽と知り合ってくれた=いつか会いに行きたい世界中のファンに、今回は駆けつけられなかった日本のファンに、当然、目の前で熱視線を注ぐファンにも、心を込めて。
そしてその余韻の中で手渡された「19」はまさに、一緒に過ごしている今、この瞬間の奇跡と幸福を噛み締める楽曲だった。
JAPAN FINAL(2days、2部制の2日目夜公演だったため、途中からそう呼ぶことに・笑)のラストは、「心鏡」を会場中の全員でシンガロング。
YUの左手が自由に伸びやかに会場を包み込んで終演を迎えたと思いきや……ドラムのカウントともにアコースティックギター抱えたYUが振り返ると、三度目の「夢中」へ! あのままでは終わらせられない。そんな猛烈な負けず嫌いがYUを前進させているのだ。ロックに全力で駆け抜けるフィナーレが抜群にカッコよくて、密かにめちゃくちゃ得した気分になった。
本日の公演が終わったことを知らせるアナウンスが流れても鳴り止まないアンコールに応えて、チラリ再登場。「僕が曲を作るまで待っててください」とだけ伝えて、ちょっぴり名残惜しそうステージを後にした。私たちは最後に交わした再会の約束とライヴの興奮を胸に家路に着いた。(Text 山本祥子)
※写真は8月12日 昼公演のものになります。
【セットリスト】
01. 弱虫
02. 夢中
03. 梅雨のち晴れ
04. アシアト
05. remembering
06. 最後の雨 (カバー)
07. バイ・マイ・サイ(カバー)
08. 19
09. 心鏡
10. 夢中
【配信情報】
デビュー4周年を記念したライブ+ミニトークイベントのライブ配信が決定!
『YU Debut 4th Anniversary Live Event~THIS IS YU~in TOKYO」Live Streaming』
配信日時
2024年9月22日(日) OPEN 19:30 / START 20:00
チケット:5,800円
・【Amuse+限定】特典付き視聴チケット
・一般視聴チケット
詳細情報はこちら
https://liveship.tokyo/yu4thanniversaryevent_thisisyu/
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【プロフィール】
YU
ユー。1995年1月3日生まれ。愛知県出身。 2020年8月に台湾でミュージシャンとしてデビュー。2021年「We Best Love 永遠の1位 /2位の反撃」にて初主演でドラマデビュー。同作の挿入歌も担当。2021年8月から日本での活動も開始。2022年、「祈りのカルテ~研修医の謎解き診察記録~」で日本ドラマ初出演。ドラマ「何曜日に生まれたの」では雨宮純平役で話題に。映画『みーんな、宇宙人。』が公開中。ニューシングルCD「弱虫/remembering」が発売中。
公式HP
https://www.amuse.co.jp/artist/A8966/index.html