世界各国で話題を呼んだ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ監督が初プロデュースを手掛けたタイ映画『親友かよ』が、ついに日本で封切られる。友情、恋、夢、そして“死”といった青春の葛藤を繊細に描いた本作で、主人公ペーを演じたアンソニー・ブイサレートと、友人ジョーを演じたピシットポン・エークポンピシット。今作が初共演となった2人に、映画の舞台裏や互いの印象などを語り合ってもらった初の対談取材をお届けする。
■『親友かよ』が初共演のお2人ですが、最初に会ったときの印象は?
アンソニー・ブイサレート(以下トニー)「最初に会ったとき、ジャンプは童顔だったので、そこまで歳が離れているとは思いませんでした。でも撮影が進むうちに、成熟した大人っぽい一面を感じました」
ピシットポン・エークポンピシット(以下ジャンプ)「初対面はオーディションだったのですが、トニーは少し緊張していたのか、自信なさげに座っていました。一緒にオーディションを受けることになって親友を演じることになったので、僕から声をかけてフレンドリーに接しました。彼に緊張してほしくなかったので、“年齢のことは気にせず、親友を演じようよ”とも伝えました」
■撮影を経て、お互いの印象は変わりましたか?
ジャンプ「トニーはすごくチャーミングだし、才能豊かな人だなと感じました。ただ、少しというか、かなり心配性なところがあるかも(笑)。自分を落ち着かせようとしているんだけど、顔に出ちゃっているんです。完璧主義なのかなと思います」
トニー「そうかも。監督の期待に応えられているか、不安になることがあって。でもそれは、ちゃんとやりたいっていう気持ちからなんです」
■脚本を読んだとき、それぞれの役についてどんなことを感じましたか?
トニー「僕にとっては1本目の映画(『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』)を撮り終えたばかりで違うタイプの役にも挑戦したい気持ちが強く、やる気の炎が燃えていました。だから『親友かよ』の脚本を読んだときには、すぐにこの新たな役に入り込む準備ができていました」
■目的のためなら手段を選ばないペーという役柄に、共感できましたか?
トニー「一見、自己中心的に見えるかもしれませんが、僕にはペーの行動の理由がよくわかったし、共感できました。僕はペーのことを愛し、理解もしていました」
■ジャンプさんが演じたジョーは、明るくて笑顔が素敵なキャラクターでしたね。
ジャンプ「ちょっと笑いすぎじゃない?って思うときもありました(笑)。でもあそこまで陽気で、人生にポジティブな姿勢を持っている人って今の社会ではあまり見ないですよね。台本を読んでいても、ジョーは友情を育むことにすごく幸せを感じているのが伝わってきたし、心がきれいだから、友達がたくさんいるのかなと思いました」
■物語には「死」という重いテーマも含まれていますが、それについて何か考えさせらえることはありましたか?
ジャンプ「あまり深くは考えませんでした。ただ、ジョーとして自分の遺影を見るシーンはちょっと不思議でした。まるで自分の葬式のシミュレーションをしたようで……。それと、この映画を観た友人たちの僕への態度が変わったんですよ。なんだか、以前より敬意を払ってくれるようになって。印象に残って嬉しかった出来事でした」
■演じたジョーの存在と重なって、改めてジャンプさんの大切さが身に染みたのかもしれませんね。“友情”というのも本作の大事なエッセンスですが、ご自身の友人を思い出すこともありましたか?
トニー「正直、自分の友人を思い出すことはなかったです。というのも、撮影前の演技のワークショップを通じて、共演者たちを本当の友達だと思って演じていたので」
■キャスト同士の信頼関係を深めるようなワークショップだったんですね。
トニー「印象に残っているのは、ジャンプと2人でやった“目を閉じて互いの腕を掴む”というものです。たしか、相手との繋がりを作るのが目的だったよね?」
ジャンプ「うん、そうだね」
トニー「そのやり取りで、自分がどこまで彼を信頼できるかを試されていたのですが、最終的にはオッケーが出ませんでした(苦笑)」
ジャンプ「ちょっと補足すると、お互いに腕を掴みあって体重を預けながら、相手が自分を支えてくれるかどうかを確かめるものでした。僕がどんどん体重をかけていったら、トニーの体がどんどん固くなっていって(笑)。“いつになったら僕を支えてくれるのかな?”と感じていたのですが、あれは僕達が信頼関係を築くための最初のやりとりだったと思うし、お互いを知るいいきっかけになりました」
■そうやって身体を通して信頼関係を築いていったんですね。では、映画のなかで特に心に残っているシーンは?
ジャンプ「先輩が、ジョーの好きな子にアプローチするシーンですね。そこでジョーは、中指と人さし指を交差させて“叶わない” っていうポーズをするんです。その瞬間、“自分を信じているジョーってかっこいいな”と思いました。年を重ねると、自分を信じることが難しくなるっていくし、臆病にもなってしまうけど、あのときの彼のまっすぐな姿勢に勇気づけられたし、自分の人生とも繋がる部分があるなと思いました」
トニー「僕は学校の講堂で叫ぶシーンが印象的でした。大勢の学生を前に話すシーンだったので、足と手が震えて。観客役の生徒が何人いたか覚えていないぐらい緊張しました。ペーの情熱を身振り手振りで表現しなきゃいけなくて、最初のテイクでは気持ちが高まらなくて上手くいきませんでした。でも、アッター監督やスタッフのみなさんが、プレッシャーをかけず集中できる環境を作ってくれて。そのおかげで、最終的には感情をしっかり爆発させて演じることができました」
■この映画で2作目となるトニーさん、初出演となるジャンプさんですが、今回の現場で得たことや、今後の目標はありますか?
ジャンプ「現場では、スタッフのみなさんから本当にすごいエネルギーを感じました。全員が心から映画作りを楽しんでいて、その姿勢が僕は大好きでしたし、今作を通して映画作りへの理解も深まりました。今後の課題としては、脚本の読み込みと分析がもっとできるようになりたいです。アッター監督の脚本は本当に素晴らしいので、それにどう演技で応えていくか、どう役として落とし込んでいくかをもっと深く考えられるようになりたいと思いました。……映画の話を始めたら、一時間あっても足りないくらいです(笑)」
トニー「僕にとっても、今回この撮影チームと関われたことはすごくラッキーでした。アッター監督は、もしかすると本当はもっと経験豊富な俳優に演じてほしかったかもしれませんが、世界一演技経験が浅い僕たちを信じてくれて、チャンスをくれたことに感謝しています。監督にとっても初めての映画とは思えないぐらい完成度の高い作品になっていて、僕にとってもかけがえのない作品でした。この経験を経て、今後はこれまでと違うタイプの役にも、どんどん挑戦していきたいと思っています」
■ちなみに、作中に日本の漫画『ワンピース』が登場しますが、お2人の日本への印象や、好きなカルチャーがあれば教えてください。
ジャンプ「トニーは日本のこと好き?」
トニー「うん、日本は旅行で何度か旅行で行ったことがあるし、大好き!」
ジャンプ「だよね。僕はまだ行ったことがないんですけど、和食は大好きだし、今は抹茶にハマっています。とにかく日本にすごく行きたくて、東京の街をブラブラ歩きながら、外でビールを飲んでみたいです」
トニー「今は日本映画の『リリィ・シュシュのすべて』を観たいと思っています。それから、もうすぐタイで公開される、“10年間幼馴染の3人の女性を描いた”という日本映画も観たいなと思ってるのですが、タイトルなんだったかな(笑)」
Text:花倉有紀子
Translator:高杉美和
【MOVIE INFORMATION】
映画『親友かよ』
公開中
監督:アッター・ヘムワディー
プロデューサー:ワンルディー・ポンシッティサック、バズ・プーンピリヤ
キャスト:アンソニー・ブイサーレート、ピシットポン・エークポンピシット、ティティヤー・ジラポーンシン ほか
配給:インターフィルム
公式HP:
https://notfriends.jp/
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