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    2025年8月7日 YU 「YU 5th Anniversary Asia Tour -vs YU-」ライブレポート 


    7月19日 東京・よみうり大手町ホール 2部

     アジアツアーも終盤に差し掛かってきたからか、はたまた勝手知ったるよみうり大手町ホールだからなのか、もちろん2人の相性の良さもあるのだろうけれど、悲鳴にも似た客席の歓声とは裏腹に、ステージに登場したYUとサポートメンバー杉本雄治(ONCE)はなごやかな空気を纏っていた。あたり前みたいにそれぞれの立ち位置でギターを抱え、杉本のカウントを合図に2本のギターがオープニングナンバー「nova」を形作っていく(印象的なリフはYU担当でした)。解放感溢れるサビに向かって熱を帯びていくYUの歌声と、凛とした佇まいに驚かされた。〈始まりはいつだって 誰も待っちゃいなくて〉〈試行錯誤できるほど スキルなんてないけど〉〈崖っぷちに立ったんだ〉この曲に詰め込んだ不安や葛藤は、待っていてくれるファンを得て、少しずつ着実にスキルアップした今だからこその渇望へと進化していた。

     軽い挨拶、たった2人のメンバー紹介、そして「闘っているように見えますか?」という問いかけで始まった最初のMC。ツアータイトル『vs YU』には、「2月の大阪公演で、ライヴってこんなに楽しいんだなぁと思えるステージがやっとできました。でももっといいライヴをするためには、もっともっとスキルアップしないといけない。本当に己との戦いです」との気持ちが込められているらしい。この言葉を体現するように、独特の憂いを含んだ初期曲「アシアト」「梅雨のち晴れ」「心鏡」は、涙も虚しさも孤独感もどうしても手放すことのできない自分を受け入れた上で、それでもみんなを〈芽吹いたこの気持ちで照らさなくちゃ〉っていう覚悟の楽曲として届けられた。熱量も想いも途切らせることなく披露した「夢中」は、本ツアーに向けて杉本が編曲したニュー・バージョン。アレンジを受け取ったYUは「夜中にふつふつとしながら曲を書いていた時のことを思い出した」そうだけど、リハーサルを経て、様々な場所でライヴを重ねてきたこの日のYUのパフォーマンスは、心の震えを繊細に描きつつも、エモーショナルで、尋常じゃなくドラマチックだった。

      ステージを降りる杉本を見送り、自らマイクの前へ椅子を移動、ゆっくり腰かけて、ひとりでスタートさせた弾き語りコーナーは、『vs YU』を象徴する場面で、間違いなくライヴのハイライトだ。自分のリズムで、自分の歌声とギターだけで、自分が綴った想いを目の前の一人ひとりに手渡していく。ちょっぴりイビツだけど愛おしい、今までで一番あったかい「remembering」。

     さらにステージ後方に置かれた11本の照明がYUの孤独を映し出し、けれども聴こえてくるヴォーカルは吸い込まれそうなくらい艶やかで、間奏でギターを弾く姿はものすごく嬉しそうで、切ないほどに美しく、とびきりやさしい「19」だった。歌い終えてひと呼吸、「改めて、よろしくお願いします」再び杉本を呼び込むYUから伝わってきた深い安堵も記しておきたい。お馴染みのバンドではなく2人編成、からの弾き語り、挑戦とはいつだって恐怖を伴うものなのだ。あとこのタイミングのソロMCで、ツアーの合間を縫って赤羽に行ったこと、意外とディープな街の激渋な店好きであることが明かされたので、ここぞ!という穴場の飲食店情報をお持ちの方は、SNSへメッセージを是非(笑)。

     カヴァーもまた今回の編成を最大限活かしたスペシャル! 杉本の鍵盤が奏でる澄んだメロディの上を転がるような中国語のリズムが小気味良く、ファルセットと地声を巧みに使ったサビの余韻が終演後もずっとそっと残り続けた「永不失聯的愛」(周興哲)。アコギに持ち替えた杉本の華麗なカッティングとコーラス、YUの力強くもラフな歌声が新鮮に響いた「やさしくなりたい」(斉藤和義)。どちらも「今、みんなに届けたい」っていう理由からの純度の高いセレクトでした。

     会場に足を運んでくれたファンといつも支えてくれるスタッフへの感謝、初めてのツアーを通してライヴが育っている実感、さらに「僕自身、己との戦いがしっかりできていると思います」なんて頼もしい言葉と「これからもいい作品を作るよう頑張っていきます」という遠くない未来の話を丁寧に伝えたら、いよいよ終盤戦。「もう一丁」「次がラスト!」最高のコール&レスポンスを求めて煽りまくるYUと、その要望を軽々と超えて過去イチの〈Wow Wow Wow Wow~〉を叩き出す観客の攻防がめちゃくちゃ楽しい「envision」は、現時点の最新曲にして、すっかりクライマックス曲だ。

     そしてラストナンバー「弱虫」には、YUの現在が投影されていたように思う。自分の弱さが強さなのかはまだわからないけど、強くなるためにはやさしくあらねばならず、自分を肯定することは、自分を好きでいてくれる人を認めて大切にするっていうことで。だから全員の心をぎゅっと握って〈悔しさも抱きしめたまま 光さす向こうへ羽ばたいてゆくよ〉とまっすぐに歌う、とても愛に満ちたライヴになったのだ。

     アンコールの「水藍色情人 Blue Lover」はみんなへのとびきりのギフト(多分カヴァーの選曲も)。多くの人にとってYUとの出会いの作品であり、ライヴで聴くことを切望されてきた俳優デビュー作『We Best Love』の挿入歌を一緒に歌い、一緒に笑い合う。YUは自身の原点と向き合い、積み重ねてきた出会いと別れと喜びと悔しさを噛み締めながらこのツアーを駆け抜けて、5周年に突入する。

    TEXT:山本祥子

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    【SET LIST】
    01 nova
    02 アシアト
    03 梅雨のち晴れ
    04 心鏡
    05 夢中
    06 remembering
    07 19
    08 永不失聯的愛 (周興哲)
    09 やさしくなりたい(斉藤和義)
    10 弱虫
    11 envision
    12 Blue Lover

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    【プロフィール】
    YU
    ユー(楊宇騰YU/ヤン・ユータン ユー)。1995年1月3日生まれ。愛知県出身。2020年8月に台湾でミュージシャンとしてデビュー。2021年「We Best Love 永遠の1位 /2位の反撃」にて初主演でドラマデビュー。同作の挿入歌も担当。2021年8月から日本での活動も開始。日本での主な出演作は、ドラマ「祈りのカルテ~研修医の謎解き診察記録~」「何曜日に生まれたの」、映画『みーんな、宇宙人。』など。現在、FOD縦型ショートドラマ「トゥルー・ラブ・ストーリー~”究極の愛”と”死”の選択~」に出演中。


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    「YU 5th Anniversary Fan Meeting -vs YU-」

    【日程】
    2025年8月11日(月・祝)
    【開場/開演】
    1部:開場12:30/開演13:00
    2部:開場15:30/開演16:00
    3部:開場18:30/開演19:00
    【会場】
    横浜ランドマークホール (神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 ランドマークプラザ5F)
    【チケット情報】
    一般:¥8,800(全席指定・税込)
    *ドリンク代別
    問い合わせ先:キョードー横浜 045-671-9911 (月~金11:00~15:00)

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