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    2026年2月6日 宮森玲実 映画『愛のごとく』インタビュー

    作家・山川方夫の代表作にして遺作である官能純文学『愛のごとく』が、約60年の時を超えて映画化された。封切り館となった池袋新文芸坐では公開初日から連日満席となり話題に。主人公・ハヤオの元恋人・イズミを演じるのは、脚本・監督・主演を務めた映画『わたしの頭はいつもうるさい』で第18回田辺・弁慶映画祭の俳優賞を受賞した宮森玲実。俳優としての新境地を切り拓いた彼女自身の一世一代に迫った。

    ■完成した作品の感想をお願いします。

    「私のイメージとしては、背徳であるとか不倫といったタブーを描く作品って、ビジュアルも含めて湿度のあるドロドロようなものが多い気がしていて。でもこの作品は気持ちがいいくらい清々しくて、不倫なのにこんなに爽やかに恋愛が成立する映画は初めて観たなと思いました」

    ■たしかに。リアルであり生々しさもあるんだけど、湿度が低いというか。

    「湿っぽくないんですよね。けっこう絡みのシーンとかもあったはずなんですけど、陽射しの中が多いからなのかそれが印象的で」

    ■それと、イズミの明るい性格もあるんじゃないでしょうか?

    「それもあるかもしれないです。イズミは自分の中の想いをなるべく表に出さないというか。ハヤオに伝わらないように、だけど近くに寄っていく…というもどかしさも観ていてありましたね。すごく腑に落ちたのが、編集の蛭田智子さんが“この物語は、イズミの情念に(観る人が)気がついていく過程の物語”というような事をおっしゃっていたと聞いて。井土監督とそのように作り上げていったらしく。イズミ自身も気づいていなかったことに気がついて、ハヤオへの想いや情熱に惹き寄せられていってしまう話なんだなっていうのは、完成してみて初めて思いました」

    ■そうだったんですね?

    「イズミの内側で燃えていた熱情が、どんどん露わになっていくシーンがあるんですよ。ハヤオを傷つけるつもりだったはずが…イズミってハヤオに対して言葉と行動が、実は最初、かなり裏腹なんですよね。でもイズミが扉をノックしたことによって、ハヤオは今まで向き合ってこなかった思いに向き合い始める、そこには恐れもあってっていう、そういう物語だと思うんです」

    ■なるほど…。撮影の過程で、井土紀州監督からイズミについて何かお話はあったのですか?

    「監督とは撮影前の段階で、やはり“湿っぽくしたくない”と言われました。“暗い物語にはしたくないから、宮森さんはそのままで、明るく爽やかに生きてください”と言われたのを覚えています」

    ■イズミってサバサバしていますよね。元恋人と関係を重ねながらも、夫とは離婚しないつもりだったり。

    「夫を嫌いなわけではないんですよね。それが愛なのか、家族としての情なのか?っていうのが、この年代としてもイズミにとって曖昧になっていくんじゃないかと私は想像していて。結婚という一つの領域、さらに社会では仕事もバリバリやっている女性が、自分の人生を振り返る時期に差しかかったタイミングでハヤオに再び出会ってしまったんじゃないかな。二人の男性の間を行ったり来たりしている様が観ていて面白いんじゃないかな?っていうのは、台本を読んだ時から思っていましたし、イズミにとってこの出来事は、ある意味一世一代の行動だったんじゃないかな?ってすごく思うんです」

    ■“ハヤオと再会してしまったが故に”起こした行動と考えると、やっぱり一世一代だったんでしょうね。

    「私は映画って夢の世界だと思っているので。夢で起きることならどんなことでも夢物語だから(笑)、観る方がいろんな想像とか妄想をしていいと思っていて。こういう情熱のある愛の話は、いろんなことを追体験できるというか、観ている人もときめいたりできるのがいいなって思うんです」

    ■作品を観て、まさに高校時代の恋愛を思い出しました(笑)。

    「やっぱりそうなんですね? けっこうみなさん、今までの恋だったり愛を思い出してくださる方が多くて。こうやって取材をしてくださる方が“実は僕も私も…”って話してくださるんですよ」

    ■そうだと思います。

    「過ぎ去った愛や、恋の瞬間を振り返られるような作品になっていたらいいなと思いますし、1人静かに観て想いに耽ってくれるのも嬉しいです」

    ■ところで、イズミ役はオーディションだったそうですね。受けようと思ったきっかけ、または理由は何だったのでしょうか?

    「まず、“井土紀州監督作品のヒロインを募集しています”というのを見つけて、台本を読ませていただいて、すごくいい物語だなと思いまして。もしかして今だからこそ出せる感情とかがあるかもしれないと思って。その当時ちょうど『わたしの頭はいつもうるさい』の公開の準備をしていて、よりお芝居に恋焦がれている時期だったんですよ。台本を最初に読んだ時のゾクゾク感とか胸のざわめきが治まらなくて、これは出たい!って直感で思ったんですよね」

    ■井土紀州監督作品というところも大きかったわけですね?

    「井土監督はもともと脚本家としても同時に活躍されてきた方なので、そういう意味でも、物語にいい形で気持ちが乗っかっているのでは?と思いましたし…。『百年の絶唱』とか以前の作品も拝見しましたけど、一貫して井土監督の映画だなってなんかわかるんですよ。それが何故なのかっていうのを私は論理的にはまだ見つけられていないんですけどね」

    ■でも宮森さんご自身が今回、井土作品の中に入ってみて感じたものもあるのではないですか?

    「はい。撮影の時は日々一生懸命で役のこと以外考えている暇がなかったんですけど、初号試写で初めて完成作品を観た時に、実際の私とは違う人が映ってる感覚になったんですよ。そうやって魅せてくれるのが井土監督の映画なのかな?と。これ、私じゃないなって。その感覚は新しい発見でした」

    ■イズミには、役としてどうやって入っていきましたか?

    「読み合わせの中で掴んでいけるものもありましたし、実際に古屋呂敏さんとお会いした中で膨らんでいった体感というか、イメージは大きかったかな。古屋さんご本人の根っからの朗らかさみたいなものと、この役柄の物静かな暗さみたいなものが上手く合わさって、ハヤオを演じている古屋さんではあるんですけど、ハヤオを引き出すことで古屋さんご自身が出てきてくれないかな?とちょっと思いながら役としてノックしていたところはあります。自分をどうするか?というよりは、ハヤオにどう小説と向き合ってもらえるか?ってことをなるべく考えるように、だんだんなっていきましたね」

    ■もう宮森さんご自身がイズミだったんですね。

    「あ、そうだったらうれしいです。ハヤオに小説を書いてもらいたいというのが、イズミの一番の願いだったと思うので。最初に台本を読んだ時に、主人公のハヤオの気持ちのほうがよく理解できると思ったんですよ。素直になれないし、自意識をこじらせたままグルグルしているというか、孤独を温めているような人だなって。“私、ハヤオできる!”と思いました(笑)。逆にイズミのほうがホントにわからなくて。どうしてこの人に惹かれてしまうのか、なんでこんな行動に出たのか、それをより解りたくてオーディションを受けたというのもありましたね」

    ■そうだったんですか。私は映画を観ながら、だんだんと“イズミ、がんばれ!”って気持ちになっていきましたよ。

    「(笑)。そうやって応援しながら観てくださる人がたくさんいたらうれしいなって思います」

    ■この映画を体験して、ご自身が得たものとは何でしょうか?

    「ここまでのしっかりとした恋愛作品を演じるのは初めてだったので、そういう意味でも1つ挑戦できたなと思います。絡みのシーンを演じたことも1つ殻を破ることができたし、今の自分として挑戦させていただけたことは大きな経験だったなと思います」

    ■『わたしの頭はいつもうるさい』のお話をもう少し。先ほど高校時代を思い出したという話をしましたが、この映画こそ18歳の“のぞみ”を通して、まさに高校時代が蘇ってきます。

    「あ、うれしい! ありがとうございます。今まだ公開が続いているんですけど、やっぱりその時々にしか出せないものや、そうでないと、残そうと思わないと残らない瞬間って絶対あると思うんです。観る人が持つ記憶の断片を拾うような作品であったらと願ってます」

    ■舞台挨拶などでお会いした方は、こんなに美しい大人の女性だったとは!と、驚かれるのでは?

    「高校生を演じた事もあり前情報なしで観た方が“あ、監督が主演されてたんですね?”とかけっこうあるみたいで。“席があったのでたまたま来たんですけど、舞台挨拶に女優さんが来ると思ったら監督が女優さんなんですね?”とかよく言われます」

    ■(笑)。

    「監督が女優ですし、どっちかというと女優が監督したようなところがありますって答えてるんですけどね(笑)」

    ■『わたしの頭はいつもうるさい』という映画は、宮森さんにとって今後の道標となるのでしょうか?

    「本当につくってよかったなと思います。それこそイズミの一世一代は、ハヤオにもう一度近づいていってしまうことだと思うんですけど、宮森玲実の一世一代は、この映画を創ることです。今後私は一生お芝居を続けたいと思ってるけど、このままじゃいかんと(笑)。自分で全部出し切る作品を、お芝居の意味でも気持ちの上でも1回やり切らないと!と思って創ったのでね。それが結果的にこういう形で広まって、お客さんに届いたことで得たものもたくさんありますし、劇場に行くことがこれまで以上にすごく好きになりました。一観客として自分が映画を観るのも好きなんですけど、上映していただいた劇場さんに行って、実際に観た方の生の感想を聞くことが最高で(笑)。本当に監督、主演をやってみてよかったなと思いました。あと映画の見方も、演じる自分の気持ちもちょっと変わりましたね。それまでは今後も演じることを続けていけるのか?と考えてしまうこともあったんですけど、主人公のノゾミじゃないけど“関係ない、動け!”というか、私の“演じたい想い”への覚悟を作ってくれた映画だなと思います」

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    共通テーマ音楽コラム「MY POWER SONG」

    中島美嘉「FINE THE WAY」 昔から事あるごとにパワーをもらっているバラード曲。小学校から中学、高校とずっと有線イヤホンで聴いていましたね。この曲は悔しいことがあると、がんばろう!って奮い立たせてくれるんです。イントロも美しくて大好きな曲です。

     
     

     
    ■プロフィール■
    宮森玲実
    みやもりれみ。12月17日生まれ。東京都出身。日本大学芸術学部映画学科演技コース卒業。俳優として活動するなか映画製作を開始。初監督長編『わたしの頭はいつもうるさい』が第18回田辺・弁慶映画祭にて俳優賞を受賞、テアトル新宿での1週間限定レイトショーにて1,000人以上の動員を記録する。2025年より監督としてはBABELLABELへ所属する。

     
     


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    ■スタッフクレジット■
    Photo コザイリサ
    Text 三沢千晶

     
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    ■作品紹介■

    映画『愛のごとく』

    2026年1月23日(金)より池袋・新文芸坐ほか全国順次公開中
    2026年2月13日(金)〜アップリンク吉祥寺にて公開決定!
     
     
    https://www.legendpictures.co.jp/movie/ainogotoku/
     

    出演:古屋呂敏 宮森玲実/蒼田太志朗 窪田 翔 たなかさと 山崎真実 吉岡睦雄 佐藤真澄 芳本美代子 東ちづる

    原作:山川方夫
    監督:井土紀州
    脚本:小谷香織

    制作:レジェンド・ピクチャーズ
    配給・宣伝:Cinemago

    ©2026「愛のごとく」製作委員会

     
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    映画『わたしの頭はいつもうるさい』

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    月30日(金)〜2月12日(木)神保町シネマリス
    2月20日(金)アップリンク吉祥寺にて上映

    https://www.watashino18-25.com/
     

     
     
    ■イベント情報■

    『愛のごとく』アップリンク吉祥寺

    2/13(金)・2/14(土)・2/15(日)は監督と出演者による上映後舞台挨拶を予定。

    『わたしの頭はいつもうるさい』神保町シネマリス
    2/6(金)・2/8(日)・2/10(火)宮森玲実さんによる上映後アフタートークを開催予定。
     
     

     
     
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