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    2025年11月14日 鈴木仁×中沢元紀 舞台『シッダールタ』インタビュー




     ノーベル文学賞受賞作家であるドイツの作家ヘルマン・ヘッセの「シッダールタ」を舞台化。白井晃が演出を務め、草彅剛が自我を探求する主人公シッダールタに扮する。そんな本作で、鈴木仁はある男の友人・デーミアン役を、中沢元紀はシッダールタの息子役を演じる。稽古が始まったばかりというタイミングで二人に話を聞き、本作との向き合い方や、お互いの印象などを話してもらった。

    ■出演が決まった時の印象を教えてください。

    鈴木仁(以下、鈴木)「舞台出演は4度目になるのですが、未だに生の怖さを感じつつも、挑戦してみたいという気持ちが大きかったです。しかも、演じさせていただくデーミアンという役は、この物語を知らない人からすると、どんな役柄なのか分からない、不思議なところがあるので、そういう部分を自分でも楽しみながら、お客様に届けられたらいいなと思いました。お話をいただいた時はまだ台本は上がっていなかったので、翻訳された原作を読んで準備をしていました」

    中沢元紀(以下、中沢)「僕はオーディションというか、(演出の)白井(晃)さんとの面談を経て出演させていただけることが決まったのですが、僕にとって初舞台で白井さんが演出、草彅剛さんが主演と最初からこんな錚々たる方々に囲まれながらできることはないと思うので、楽しみ半分、不安半分ぐらいの気持ちでした」

    ■もともと舞台に興味はあったのでしょうか。

    中沢「はい。同じ事務所の先輩方もコンスタントに舞台に出演している方が多いですし、映像とはまた違うものだと思うので、いつか挑戦したいという気持ちがありました」

    ■演出の白井晃さんにはどんな印象を持っていますか。

    中沢「厳しい方だというお話しをよく聞いていたので、最初の面談にびくびくしながら行ったのですが、お会いしてみたらとても柔らかくて優しい方で、“あれ?”と思うくらいでした」

    鈴木「そうだよね(笑)。僕の初舞台となった『オレステスとピュラデス』の時に、(会場となった)KAATの芸術監督を白井さんがされていましたし、白井さんの作品はいくつか観させていただいています。だから、今回はどんな作り方になるのだろう?と気になりました」

    ■まだ稽古が始まったばかり(取材時)ということですが、現時点で、ご自身が演じるキャラクターにはどんな印象を持っていますか。

    鈴木「デーミアンは違う世界線の人として登場するので、その世界観をどう落とし込むのか、ということは考えています。ベースとなる世界観に溶け込みながらも、異質感があり、観客の方々に何かを感じさせる部分がないといけないとは思っています。正直、台本を読むだけでは理解しきれない部分もあったので、プレ稽古の際は白井さんに個人的に稽古をつけていただいて、いろいろとお話を聞くこともできました。このシーンではこういうことがあって、ベースの世界観とはこういう部分で結びついているということを、一個一個聞いていく中で理解していきました。素直に言うと、最初は準備したくてもできない部分が多かったです。この作品自体が難しいですし、“理解しています”と言い切れないところがありました」

    ■逆にお稽古をしながら深めていける楽しさもあるかもしれないですね。

    鈴木「プレ稽古の時は役のことだけではなく、舞台に立つという面での芝居の幅や、振り方、こっちを求められたらこういうこともできるようにというのを、白井さんと少しずつアプローチをしながらやっていて、今は本稽古が始まって、デーミアンを作っていく方向に変わりました。舞台上での芝居の難しさを改めて感じながらも、楽しめました」

    ■中沢さんはいかがでしょうか。

    中沢「シッダールタの息子は、物語の後半、シッダールタ(草彅剛)に大きな影響を与える役なので、その役割をしっかり果たしたいと思っています。今回、(メインとなる)シッダールタの息子以外の役もやらせていただくんですけど、同じ作品の中の別の役を複数演じるというのも初めてなので、そこも面白いなと感じています。白井さんが居ない序盤の稽古では、舞台が初めてということで、発声の仕方から練習しました。映像だとカメラで撮られている部分だけの動きでいいのですが、舞台は空間も使って、どの方向を向いていたとしても、お客さんに届けないといけないので、下から出すような発声をしつつ、そこにお芝居としてのリアリティも持っていないといけないので、難しさは感じています。息子としては、単なる反抗期の息子のようにならないように、父親からの愛は感じながらも、現状をどうにかしたいという気持ちを持って、父親にぶつかっていけたらと思います。シッダールタが自分の父親にやったことを、息子もシッダールタに対してやるので、そこは息子とシッダールタが重なっていると観てくださる方々に感じさせないといけないなと思っています」

    ■お二人は初共演となりますが、お互いの印象を教えてください。

    鈴木「同い年なんだよね」

    中沢「(今回の共演者の中では)同い年が二人だけで。共通の友達がいるので、実は、印象を聞いたんですよ」

    鈴木「そうなの?」

    中沢「伊藤あさひに聞きました」

    鈴木「なんて言ってた?」

    中沢「たぶん雰囲気とか、波長みたいなのは似てる、みたいなことを言われたので“仲良くなれるかな?”みたいな不安はなくなりました」

    鈴木「お互いにそんなキャピキャピもしていないだろうし(笑)」

    中沢「(鈴木がいて)心強いです。僕の中で同い年って特別なものがあるので。同世代が頑張っていると自分も頑張らなきゃと思いますし、刺激し合えればいいなと思っています」

    ■シッダールタ役の草彅剛さんにはどんな印象を持っていますか。

    鈴木「本読みで初めてお会いしたのですが、第一声から出来上がっていたというか。“うわっ、これについていかないと”と思いました。デーミアンも息子もシッダールタと一対一で向き合う場面が多いので、さらにそこは緊張感が増しました。でも、本読みが終わると、笑顔でお話をしていて。(ゴーヴィンダ役)杉野(遥亮)さんとは以前、共演されていることもあってか、一緒にお話しをされているところをよく見るんですけど、役の時とは声も雰囲気も全然違うんだなと。逆に、あのぐらい違う印象に一気に持って行けるのがすごいなと、尊敬の眼差しで見ています」

    中沢「僕も(鈴木と)同じような印象を持ちました。お芝居をしていない時は優しい笑顔が多めなんですけど、本読みの時はすごく雰囲気が変わって。何かスイッチがあるのか、ずっとオンのままなのか、そこは分からないですけど、空気を全部自分のほうに引き寄せて、芝居で現場を引っ張ってくださる方だなという印象があります」

    ■中沢さんにとっては父親という役どころになりますよね。

    中沢「まだ稽古序盤で、そんなにやり取りができていなので、これからが楽しみです。稽古を重ねてお芝居を詰める段階になったら、また本読みの時とは変わってくる部分もあると思いますし、そこが楽しみで仕方ないです」

    ■本作はシッダールタが悟りを開いていく物語ですが、最近、お二人が気付きを得たことはありますか。

    中沢「嫌いだったミョウガが美味しいことに気づきました(笑)。夏にそうめんを食べている時、ネギ、ミョウガ、オオバがごちゃ混ぜになっているタイプの薬味で、仕方ないと思ってミョウガも一緒に入れたら美味しくて、大人になったなと思いました」

    鈴木「今年に入って、“やっぱり動くことが好きなんだ”と思いました。キックボクシングを習っていて、ジムも行っていて、今年の頭からボルダリングも始めました。仕事のスケジュール的に誰かと予定を合わせなくちゃいけないチームスポーツは難しいので、一人でもできるものになってしまうんですけど運動は好きですね。あとは最近、夏が暑いので、室内でできて、でも適度に汗もかきたいから、クロスフィットをやってみたいと思ってジムを調べています。さすがに舞台中にやるのは無理だと思うので、終わったら始めたいですね」

    中沢「クロスフィットって何ですか?」

    鈴木「簡単に言うと、筋トレをめちゃくちゃやりまくる(笑)。例えば、1分間の中で懸垂を何回できるか、みたいな感じでやって、何十秒か休憩して、また別の筋トレをやっていくっていう」

    ■中沢さんも運動が得意なイメージがありますが、鈴木さんと一緒にやってみるとか?

    中沢「運動は好きですけど」

    鈴木「やってみる?」

    中沢「大丈夫です(笑)」

    ■では、何かお二人でやってみたいことはありますか。

    鈴木「(中沢に向かって)どういうことに興味があるの?」

    中沢「スポーツは好きですね」

    鈴木「オフの時は何をやってるの?」

    中沢「映画を観たり、好きなので料理をしたり、あとはサウナに行ったり」

    鈴木「サウナ行くか? たまに行くから」

    中沢「サウナ行きましょう」

    ■そして、いつかはクロスフィットも(笑)。

    鈴木「とりあえず、それは僕が行ってくるので」

    中沢「でも、行ってもやめる可能性もありますよね? キツイでしょう?」

    鈴木「キツイと思う」

    中沢「絶対続かないと思います(笑)」

    鈴木「いや、俺はやるよ(笑)。週6で運動してるのが普通だもん。この前は稽古前にボルダリング行ったからね」

    中沢「すごい」

    ■最後に、本作を楽しみにしている方々に一言、お願いします!

    中沢「初舞台なので本当にどうなるのか分からないところが多いのですが、舞台美術も独特なものになりそうですし、この『シッダールタ』にしかない雰囲気、世界観を壮大なスケールで味わっていただけると思うので、それを全身で感じていただければと思います。一瞬でこの世界観に引き込まれます」

    鈴木「『シッダールタ』の時代と、現代との結びつきがこの舞台にはあると感じていて。白井さんの狙いプラス、観る方によって、観る角度によって、読み解ける部分、感じる部分がたくさんあるんじゃないかと思います。だから、自分たちは稽古を通してそこからもっとイメージを深めていく中で、自分の動きに意味を持たせられたり、新たな発見ができるんじゃないかと思っています。それを僕たちは本番にぶつけていくので、そこからまたいろんなものを感じていただけたら嬉しいなと思っています」

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    【音楽コラム「MY LOVE SONG」】

    鈴木仁/The 1975「About you」
     鈴鹿央士と仲が良くて、今年の夏はどれだけ会ってたんだ?っていうぐらいずっと一緒に遊んでいたんですけど(笑)、央士の家に行くと、この曲のPVとかライブ映像を流してくれるんです。車に乗っている時とかも、央士がいろんな曲をかけてくれて、僕自身は音楽は好きだけど詳しくないので、聴いてみていいなと思ったのがこの曲で。それからは家とか、ジムに行く時とかにも聴いていて、日本語訳も読んで、よりハマりました。

    中沢元紀/back number「花束」
     学生時代によく聴いていました。歌詞がセリフっぽいので、普段聴いているラブソングとは別の角度から歌詞が刺さってくる感覚があります。共感できるところも多くて、今でも聴いています。back numberさんの曲は、学生時代にハマっていたので、この曲以外にもいろんな曲を聴いていました。今も移動中に音楽を聴くことが多いんですけど、当時も登下校の時とかに聴いていましたね。

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    【プロフィール】

    鈴木仁
    すずきじん。1999年7月22日生まれ。東京都出身。2017年より俳優活動を開始。近年の主な出演作は、ドラマ「復讐カレシ~溺愛社長の顔にはウラがある~」「ダメマネ! -ダメなタレント、マネジメントします-」、映画「八犬伝」「かくかくしかじか」など。映画情報番組「ムビきゅん」のMC、『MEN’S NON-NO』専属モデルを務める。ドラマ「死ぬまでバズってろ!!」に出演中。

    中沢元紀
    なかざわもとき。2000年2月20日生まれ。茨城県出身。2022年より俳優活動を開始。主な出演作は、ドラマ「下剋上球児」「ひだまりが聴こえる」「連続テレビ小説 あんぱん」「最後の鑑定人」「連続ドラマW-30 ストロボ・エッジ Season1」、映画『君の顔では泣けない』(2025年11月14日公開)、『WIND BREAKER / ウィンドブレイカー』(2025年12月5日公開)など。

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    Photo 河井彩美
    Text 瀧本幸恵
    Hair&Make-up 鈴木:鈴木かれん、中沢:速水昭仁
    Styling 鈴木:田村和之、中沢:田中トモコ 西田愛梨


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    舞台『シッダールタ』

    東京公演:2025年11月15日(土)~12月27日(土) @世田谷パブリックシアター
    兵庫公演:2026年1月10日(土)~1月18日(日) @兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

    原作:ヘルマン・ヘッセ「シッダールタ」「デーミアン」(光文社古典新訳文庫 酒寄進一訳)
    作:長田育恵
    演出:白井 晃
    音楽:三宅 純
    出演:草彅 剛、杉野遥亮、瀧内公美 鈴木 仁、中沢元紀、池岡亮介、山本直寛、斉藤 悠、ワタナベケイスケ、中山義紘 柴 一平、東海林靖志、鈴木明倫、渡辺はるか、仁田晶凱、林田海里、タマラ、河村アズリ 松澤一之、有川マコト、ノゾエ征爾

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