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    2022年1月6日 玉城裕規 スペシャルインタビュー

     

     2021年8月、KAAT神奈川芸術劇場にて上演された舞台『湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三』。その千穐楽公演が、CS「衛星劇場」にて放送される。荒ぶる男の1人を演じた玉城裕規に、公演を振り返っていただいた。

    ■公演を改めて振り返っていただいて、ご自身にとってどんな舞台になりましたか?

    「刺激がとても強い舞台でしたね。共演者のみなさんからいただく刺激もそうなんですけど、稽古前の取材などで演出のシライケイタさんとご一緒させていただいた時に、“全員が主役で、全員が看板役者でいきたい”といことをおっしゃっていて、まさにその通りになったなという感じでした。脚本が、稽古を重ねる毎に出来上がるという感じで、シライさんも知らずだったので、一緒に創っていく感じだったんですよ。なので全員が、上がってくる台本を見て、ドキドキしながらその日の稽古に挑んでましたね」

    撮影:宮川舞子

    ■最後まで台本が上がった時には、その展開をどう思いましたか?

    「たぶん、みんな、予測がつかなかったと思います。この物語は『三人吉三廓初買』をアレンジしたもので、最初は“三人吉三”って僕ら若者の3人のことで、最後は僕が死ぬんじゃないか?ってみなさんの見解だったこともあったんですけど、台本を読んで、どちらかというと三人吉三は、親父たちのほうなのかな?って感じたので、そこもまた新しく感じましたね。僕らが親の血のつながりに巻き込まれているというか、振り回されていくほうだったので、予想できない展開でした」

    ■いや本当に、面白い展開でした。

    「そもそも、親父たちの悪さのレベルが凄すぎて、それで僕ら子世代は仕方なくそうなってしまったのかな?と。そこから逃れようとしたり、でも逃れられないという感じでもありましたし。下手したら、僕のセリフ量が一番少なかったんじゃないかな?って思いましたからね(笑)」

    撮影:宮川舞子

    ■玉城さんは悪徳刑事・柄沢正次の息子、純を演じられました。父親役の渡辺哲さんとはお稽古、本番と、どのように過ごしていらっしゃったのですか?

    「最初のほうはコロナ禍の真っ只中ということもあって、別々に稽古をさせていただいていたので、あまりお会いする機会がなかったんですよ。で、後半の残り僅かくらいで全員が揃って、ブロック毎だったり、全体の通し稽古をさせていただく中で感じたのは、渡辺さんは愛があって凄く優しい方だなということでした。自然と本作の父親像に見えてきましたし、哲さんとの距離感は、ちょうどよくて居心地がよかったです。初めて稽古場で観せていただいた時、親世代同士で息子のことを語るシーンがあったんですけど、それを観た時に自然と涙が出ちゃって。なんですかね? 理屈じゃなく、“この親子の絆って、こういうことなのかな?”って感じたんですよ。ずっと、父親の愛を感じてはいなかったけど、たまにふと出る愛が、すごく深い。それがとても印象的で、僕はそのシーンを観れただけで、2人の関係性が出来上がった気がしました」

    ■一方の子供世代3人を観ていると、ちょっとした青春感がありました。

    「僕も青春、感じていました(笑)。台本が出来上がってから3人で話したんですけど、その時の感覚では、この作品は親の世代がメインで話が転がっていくなって。その中で、僕ら若い3人はどうするのか?と。おっしゃっていただいた通り、演出のほうでも、“青春”というキーワードがあったんですよ。ただ荒ぶっているということじゃなく、もっと若く、青春していてというオーダーもあったので、その部分は結構話し合いましたね」

    撮影:宮川舞子
    撮影:宮川舞子

    ■瞳を演じた岡本玲さん、晶を演じた森優作さんの印象はいかがでしたか?

    「玲ちゃんとは3作目で、久しぶりに共演させていただきましたけど、色気が増し増しでしたね(笑)。あとは居方の存在感っていうのがドスンという感じで、最初のほうは飲み込まれそうになりましたし、とても素敵でした。森くんは、ビジュアル撮影の時から、その空気感がすごく好きだったんですよ。彼にしか出せない空気感を持っていて、かつ芝居がとても素直で、その時その時を生きているんですね。その佇まいには触発されましたし、勉強させていただきました。でも楽屋とかではちょっとかわいい部分があったり(笑)。どこを切り取っても魅力的な方でした」

    ■岡本さんは、役柄的にも姉御肌でカッコいい感じでしたしね。

    「僕よりも年上ですし、劇中でも、とても堂々としていて頼れると言いますか。僕(純)が急におかしくなっても、そのまますべてを受け入れてくれるんですよ。お二方とも、とても安心して一緒に居れる存在でした」

    撮影:宮川舞子
    撮影:宮川舞子

    ■瞳も、瞳の母親の由香子(村岡希美)もそうなんですけど、女性陣が強く、カッコいいですよね。そんな女優さん方の魅力については、どう捉えていましたか?

    「それぞれのスタンドの仕方がルーティンで決まっているというのは観ていて解りましたし、村岡さんの場合は、稽古場ではめちゃめちゃ自然体なのに、役に入ると、やっぱり素晴らしくて。台本を読むと、村岡さんの役ってとても難しいんですよ。それを難しいと思わさず、逆に魅力的に居られるっていうところに“凄っ!”と思いました。しかも色気が漂っていて。それは森くんとも話していましたね。もはや意味が解らないってくらい(笑)、流石だなと思いました。人形(ひとがた)の那須凛ちゃんも、若いのにすごくしっかりしていましたし、毎回稽古ごとに目に見えて進化して新しいものを持って来ていて、それを演出家とディスカッションするという。素晴らしいなと思いました。それに、稽古場で一番明るかったんじゃないかな。早い段階から、みなさんに自分から話しかけに行ったり、ムードメーカーでもありましたね」

    ■本作に限らず、そもそも女性とは強い存在であると思いますか?

    「めちゃめちゃ強いと思います。勝てないですね(笑)。女性がいるから男性が生きていけるのかな? 好きなことができるのかな?ってことは、要所要所で感じますし、『湊横濱~』の中でも、めちゃくちゃ強かったですからね」

    撮影:宮川舞子
    撮影:宮川舞子

    ■今回は、純としての感情の持って行き方が大変だったと思います。たとえば日常のシーンであったり、突然キレたり、その辺はご自身の中でどのようにコントロールされていたんですか?

    「感情の持って行き方は、あまり意識はしていませんでした。あの鯨楼というホテルに入った瞬間に自然とそうなる、みたいな(笑)。そんな感覚がありました。ただ、時系列が、現在だったり過去に戻ったりしたので、気持ちの切り替えっていうのはありましたね」

    ■ちなみに、こういう作品に出られた時のオンとオフの切り替えは、ご自身の中であるんですか?

    「特別に意識していることはないんですけど、“切り替えられてないよ”って言われることはあります(笑)。でも自分としては自覚はなくて、劇場を出た瞬間に切り替わってるんだろうなって勝手に思ってますし、で、また劇場に入って共演者のみなさんのお顔を見たら、自然にスイッチが入ってる…と思っていたんですけど、そのスイッチが見当たらないことがあったらしいです(笑)」

    撮影:宮川舞子
    撮影:宮川舞子

    ■今回はヤクザの話ですが、それぞれが筋を通すカッコよさもありますよね。

    「そうなんですよね。みんな荒ぶっているんですけれど、それぞれの筋があって、生き様があって。そこはとても魅力的だなと思いましたし、そういう親に対して、子供たちには自分らしさが欠落してたところもあると思うんですよ。それが最後、それぞれ自分の人生をしっかり生きるのか?というところが、見どころの1つだと思いますね」

    ■放送にあたって、ご自身が“ここを観てほしい”と思うところがありましたら、お願いします。

    「初めて純粋に、親子として会話をしてくれた瞬間かな? 親父に“純”と呼ばれるんですね。そこが素直に心が通ったのかな?と思えた瞬間だったので、そこはぜひ観ていただきたいですね」

    ■ところで、本作を経験して、横浜のイメージって変わりましたか?

    「たぶん、裏の顔っていうのは至る場所に混在すると思うんですけど、やっぱり最初はお洒落な観光地というイメージでした。この作品は、稽古からずっと横浜だったんですよ。稽古場も景色がいいところだったんですけど、稽古が進むにつれて、だんだんとその景色がくすんできましたね」

    ■(笑)。

    「実はこうなんじゃないか?とか、いろいろと考えちゃいました(笑)」

    撮影:宮川舞子

    ■(笑)。それでは、このお芝居を通して、俳優としてどのような進化を感じられましたか?

    「やっている時は、先輩方のお芝居であったり作品自体が刺激にはなっていたんですけど、終わった後、観てくださった周りの方々の意見を聞いて、自覚はなかったんですけど、少しは幅が広かったのかな?と実感しました。ただ外見的に荒ぶるだけではなく、心の刺々しさだったり、そういう内側の荒ぶり方を経験できたことは、すごくよかったなと思います。いただいたご意見の中にも、“中身が普通じゃないよね”とか“まともじゃないよね”とか。抑えようとはしているんだけど内側から滲み出てくるような狂気の部分を評価していただけたのはうれしかったです」

    ■役者としての新しい側面が生まれましたね。2022年は、どのような進化を目指されるのでしょうか?

    「この『湊横濱~』を経験して、あらためて“個性って大事だな”と感じたんです。この役者がいるからこその味、といいますか。そういう部分を常に追求して、進化していかないといけないなと思います。2021年は年男だったんですけど、年男だからと言って何が起こるというわけでもなく、自分から行動していかないといけないんだなとも感じましたし。2022年は、これまでの経験を生かして、よりよい表現ができるようにしていきたいですね」

    撮影:宮川舞子

    ■お仕事とは別に、何か始めたいことやチャレンジしてみたいことはありますか?

    「プライベートでは…“親知らず”を抜いてみたいな、と(笑)。でも、乗馬だったり、興味のあるものは増えているんですよ。あとは、お肌の調子も保っていきたいので、みなさんが美を保っている秘訣は何だろう?とか(笑)。大人の魅力を出すにはどうしたらいいんだろう?とか。些細なことですけど」

    ■プライベートでもご自分を磨く、ということですね。

    「そうですね。僕、仕事と直結していないと、プライベートに興味がなさすぎて、どうでもいいや!ってなっちゃうんですよ。仕事に繋がるものへの興味は尽きないので、益々磨いていきたいですね」

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    【プロフィール】


    玉城裕規(たまきゆうき)

    1985年12月17日生まれ。沖縄県出身。現在『映画演劇サクセス荘』が公開中。今後は、ドラマ「封刃師」ABCテレビ 2022年1月16日(日)よる11時25分スタート、テレビ朝日 2022年1月15日(土)深夜2時30分スタート)、3月5日(土)「HELI-X Talk Meeting 2022」などが控えている。

    公式HP:

    https://ism-ent.com/

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    【STAGE Information】

    湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。

    CS 衛星劇場にて
    2022年1月23日(日)午後6:30~


    作:野木萌葱
    演出:シライケイタ
    出演:玉城裕規 岡本玲 森優作 / 渡辺哲 山本亨 ラサール石井 村岡希美 大久保鷹 筑波竜一 伊藤公一 那須凜 若杉宏二
    (2021年8月27日~9月12日 KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉)

    衛星劇場 番組詳細ページ
    https://www.eigeki.com/series/S73209

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    Text ⇒ 三沢千晶