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    2022年10月29日 佐奈宏紀×矢部昌暉 朗読劇『妖琦庵夜話 その探偵、人にあらず』スペシャル対談

     通常の人間とはわずかに異なる遺伝子を持ち、時に妖怪を思わせる特徴を有する人々である “妖人”。そんな妖人周りで巻き起こる事件を描いた探偵小説『妖琦庵夜話』は、これまで全9作が発行されて人気を博してきた。その1作目『その探偵、人にあらず』がこの秋、初めて朗読劇になる。明晰な頭脳と、不思議な力を持つ主人公の洗足伊織(せんぞくいおり)役の佐奈宏紀、そして伊織とは旧知の仲であり影のある男・青目甲斐児(あおめかいじ)役の矢部昌暉(DISH//)に、本作始動に向けた現在の心境を聞いた。

    佐奈宏紀
    ©KADOKAWA CORPORATION 2022

    ■お2人は7月の舞台以来すぐの再共演になりますが、初対面時と今のお互いの印象に変化はありますか?

    矢部「初めてお会いした時からムードメーカーで、いつもふざけて周りを明るくしてくれる方だなと思っていました。それは今も変わらずで、人を笑顔にさせてくれるし、佐奈くん自身もいつもニコニコと明るくて楽しい方です」

    佐奈「僕は(矢部くんの第一印象は)“うわぁ、有名な人だぁ”って思いました(笑)。オーラがビンビンで、稽古場にいてもそこだけ光ってましたから!」

    矢部「いやいや、髪の毛(の色)でしょ!」

    佐奈「お芝居していても、いつでも舞台上でちゃんと自分が一番おいしい、絶対矢部ちゃんに目が行くところに立っているので、すごいなぁと思ってました」

    矢部「全然です(笑)。僕からしたら役や作品のことを緻密に考えて計算してやられているなというのが佐奈くんのお芝居を観ての印象で、すごいなと思っていました。(前回の共演では)Wキャストで同じ役を演じていたこともあって、なるほどこういうやり方もあるのかといつも思っていました」

    矢部昌暉
    ©KADOKAWA CORPORATION 2022

    ■今回お2人が挑むのが朗読劇『妖琦庵夜話 その探偵、人にあらず』ですが、まず原作小説や台本を読まれてどんな感想を持ちましたか?

    佐奈「今小説を読んでいるんですけど、冒頭からぶっちぎりで理詰めな内容で、僕も冒頭で脇坂くん(妖人対策本部の新人刑事)状態でした(笑)。洗足伊織は僕の役にもかかわらず、“何言ってんの、この人?”ってなってめっちゃ読み返しました(笑)。彼は言い回しが独特で、それは物事に対して深く考えているからこそだと思うんですけど、その理由のひとつとして、妖人への差別的な問題がネックになっていると思っていて。妖人を題材にしていても、そこら辺は今の僕らの日常とかなり密接に描かれているので、お客さんにも刺さるんじゃないかなと思いました」

    矢部「台本を読んで感じたのは、単純に人間VS妖人という構造ではなくて人間にも妖人にも善も悪もいるという設定が面白いなと。あとそれぞれのキャラクターのテンポ感のある会話劇を声だけで表現する朗読劇には面白さと難しさがあるなと思いました。佐奈くんが言ったような現代に通ずるメッセージも、お客さんに伝えたいところですね」

    ©KADOKAWA CORPORATION 2022

    ■この物語のどんなところを大切にして朗読劇に挑みたいと思っていますか?

    佐奈「大事にしたいのは、この物語の世界観を音だけでお客さんに届けることです。かなり独特な世界観なので、小説を読んだ印象としては、行灯や提灯のような怪しい光に包まれる感じがして。そういう異世界なのか現実なのかわからない、伊織のいる屋敷の不気味さや神々しさを、声やSEといった音だけでお客さんの脳内に想像させられたらいいですね」

    矢部「僕は自分の役を表現する声や佇まい、座るなら座り方などを意識したいですし、朗読劇は普通の舞台以上にお客さんの集中力がすごいと思うので、その世界観を壊さないようにひとつひとつ繊細にやらなければなと思っています。一番怖いのは、本を読んでいるのに噛んだり、躓いたりしたら取り返しがつかないなと(笑)。そこは朗読劇の怖いところです」

    ©KADOKAWA CORPORATION 2022

    ■矢部さんが今思う、青目甲斐児の役作りのポイントは?

    矢部「彼は物語のなかではヒール的な立ち位置ですけど、怖いセリフを言うわけでもないので、そのなかでヒールとしての立ち回りが難しいなと思いつつ。ただ悪者って自分が悪いと思っているわけじゃなくて、自分なりのルールや正義、守りたいものがあって、それが他人からは悪に見えるだけだと思うんです。だから彼が何を目指し、何をルールとして生きているのかをしっかり考えてそこを追求していけば、自然と出来上がるのかなと思っています」

    ■では佐奈さん、伊織の役作りについてはいかがですか?

    佐奈「朗読劇なので音も大事ですけど、彼がしゃべっている時はもちろん、しゃべってない時も重要だなと感じています。無音の瞬間が伊織を表現できるんじゃないかなと。歌もそうですけど、音を伸ばしたほうがいいところと、パツッと切って無音を一瞬作ったほうがリズムが出るところがあって。朗読劇でもそれが活きるので、変な息遣いを入れるのか、無音で緊張感を作り出すのか、表現を探っていきたいです」

    ©KADOKAWA CORPORATION 2022

    ■そろそろ稽古がスタートしますが、楽しみにしていることはありますか?

    佐奈「キャストがツワモノ揃いで、個性もありつつ、人に合わせるテクニックや優しさを感じるキャストさんばかりなので、すごくいい会話のテンポ感になっていくんじゃないかなと思います。本読みでみんなで合わせられる瞬間を楽しみにしてます。みんなで作ったほうがどんどん広がっていくと思うので、とにかく早く合流したいです」

    矢部「佐奈くんと前回共演した時はWキャストで一緒にお芝居をすることができなかったので、今回一緒にお芝居できることが楽しみです。あと朗読劇は普段の舞台とは違う表現の仕方で板の上に立つので、また新しい自分の表現方法を見つけられたらいいですね」

    ■では舞台を楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いします。

    佐奈「小説がめちゃめちゃ面白いので、読みながらこれアニメ化超できそうじゃん!って思ったんですけど、文字だけ読んでもキャラクターがイメージできるし、声も聞こえてくるし、世界観がイメージしやすい作品なんです。だからきっと原作ファンの方も、動きのあるキャラクターを見たい方が多いと思っていて。今回それを朗読劇で、少しだけそれっぽい格好をして演じるので、原作ファンの方は絶対楽しめると思いますし、原作を読んだことがない方も、小説を読んでから観に来るとより楽しめると思います」

    矢部「この作品自体の設定や内容がすごく面白いので、僕達はその世界観とか、キャラクターそれぞれの個性をより引き出してお客様に伝えたいです。それができたら楽しい作品になると思うので、一生懸命頑張ります!」

    ©KADOKAWA CORPORATION 2022

    ■最後になりますが、今後またお2人が共演するなら、どんな作品で共演したいですか?

    矢部「兄弟役とかやりたいですね。佐奈くんめちゃくちゃお兄ちゃん肌で、みんな付いてこい!みたいな方なんですよ」

    佐奈「へ!? そうかな?」

    矢部「前回共演したのが兄弟の物語で、僕らは弟役だったんですけど、稽古中もみんなを引っ張ったりお兄ちゃん感を感じたので、実際に兄弟として一緒にやってみたいです」

    佐奈「矢部くんと共演するなら、ドキュメンタリーじゃなくて台本ありきでいいんですけど、『バチェロレッテ・ジャパン』みたいな、主人公の女の子がイケメンのなかから1一人を選ぶという物語のなかの2人になりたいです」

    矢部「あはは(笑)。でも面白そうですね」

    佐奈「それがいつか実現したらどちらが勝ち残るか、楽しみにしていてください」

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    【STAGE INFORMATION】

    朗読劇『妖琦庵夜話その探偵、人にあらず』

    11月5日(土)~11月6日(日) 幕張国際研修センター シンポジウムホール

    原作:榎田ユウリ「妖琦庵夜話 その探偵、人にあらず」(KADOKAWA/角川ホラー文庫)
    脚本:長瀬貴弘
    演出:山崎彬
    出演者:佐奈宏紀 正木郁 寺山武志 宇佐卓真 奥谷知弘 矢部昌暉(DISH//) 他
    主催:KADOKAWA

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    【共通テーマ音楽コラム「スポーツをする時に聴きたい1曲」】

    佐奈宏紀 
    AC/DC「BACK IN BLACK」

     冒頭からよっしゃ行くか!という雰囲気の曲なので、キュッと靴紐を結び終わったら曲に入って、一日を始めたいですね。ダンスをする時も聴きたいですし、最近はバスケの大会があったのでずっとその練習をしていたんですけど、そんな時にも聴きたいです。

    矢部昌暉
    DISH//「DAWN(in 2022)」

     今年のサッカー日本代表応援プロジェクトのテーマソングで、日本代表戦の時にスタジアムで流れるらしいんですけど、聴くと沸々と闘志が湧き上がってくるので、スポーツ前にも、休憩中にクールダウンしつつ、テンションを下げきらないようにするのにもぴったりだと思います。

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    【プロフィール】

    佐奈宏紀(さなひろき)

    1997年2月25日生まれ。愛知県出身。最近の出演作は、舞台『ドラマチックハイスクール』『Paradox Live on Stage』『「BANANA FISH」The Stage』、ミュージカル『Dear myパパ』など。今後は、『ちびまる子ちゃん THE STAGE「はいすくーるでいず」』(12月15日より天王洲銀河劇場にて開幕)などが控える。その他、メインチャンネル「サナレッジ」開設など、活躍の場を広げている。

    矢部昌暉(やべまさき)
    1998年1月9日生まれ。東京都出身。4人組バンド:DISH//のメンバーとしても活動中。最近の出演作は、舞台『青山オペレッタTHE STAGE~2周年記念スペシャル・レヴューショー~』など。今後は、舞台『私立探偵 濱マイク-我が人生最悪の時-』(12月15日よりサンシャイン劇場にて開幕)、舞台『風が強く吹いている』(2023年1月18日よりシアター1010にて開幕)などが控える。

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    【クレジット】
    Text 花倉有紀子
    Photo 是枝右恭
    Styling ヨシダミホ