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    2022年12月7日 山時聡真 映画『ラーゲリより愛を込めて』インタビュー

    ©️2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 @1989 清水香子

     12月9日より公開となる二宮和也主演の映画『ラーゲリより愛を込めて』。第二次世界大戦後、シベリアに抑留され、ラーゲリの強制収容所に収監された山本幡男を主人公に、過酷なシベリアの状況を描きつつ、希望を持つことや人を愛することの大切さを伝える物語となっている。現在、17歳の山時聡真は、山本とともにラーゲリに収監された兵士・後藤実を演じ、若さゆえのあどけなさや切なさを繊細に表現している。本作を通して感じたことや、錚々たる先輩共演者達とのエピソードなどを明かしてもらった。

    ■かなりの大作映画となりますが、出演が決まった時はどう思いましたか。

    「こんな大作に自分が出てもいいのかと恐縮しました。監督が瀬々敬久さんそしてキャストの方々のお名前を聞いて、本当にありがたいなと思いました」

    ■脚本を読んだ時はどう感じましたか。

    「シベリア抑留については学校で学びましたが、脚本には教科書に載っていなかった食事や労働のことなど詳しいことも書かれていたので、ここまで酷い状況だったんだと改めて感じました。 そして物語の終わり方が素敵な作品だなと感じました」

    ©️2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 @1989 清水香子

    ■演じた後藤実という青年についてはどんな印象を持ちましたか。

    「実は物語の中で二宮(和也)さんが演じる山本(幡男)に最初に懐く役なので、そういう人懐っこいところがある人なんだと思いました。あとは、実には下に兄弟が4人いるんですけど、お兄ちゃんとしての目線もありながら、先輩からも可愛がってもらえるということで、周りをちゃんと見ることができる人間なんじゃないかとも思いました。」

    ■山時さんと実と同世代ですが、その点で感じることはありましたか。

    「僕は今、17歳で、親元で暮らしているんですけど、実は家族とずっと離れて過ごしていたので、孤独だったと思います。それにこの年齢で勉強もスポーツもできず、家族にも会えないのは、今の僕らとは価値観は違うかも知れないけど本当に大変だったと思います。実の近くには佐久本宝さんが演じた相棒のような存在はいましたけど、周りは大人ばかりで関わりを持つことも簡単ではなかったとも思いますし、孤独な状況もキツかったんじゃないかなって」

    ■実の選択した人生については理解できましたか。

    「今の僕だったら希望を持って待ち続けたいとは思いましたけど、実際に体験してみないとわからないですよね。そんなに軽く言っていいことでもないと思います。実は思考的に幼かった部分もあっただろうし、食べ物も十分に摂れない状況で頭も回らなかったとも思いますし、あの状況だったら冷静に考えることができなかったんだろうなと」

    ■実際に実を演じてみて感じたことはありますか。

    「台本からそこに込められた想いなどは感じていたのですが、実際に撮影をしてみると、寒さや食事があまり美味しくないことなど、文字で感じていた時以上に酷かったんだと感じることがありました。やっぱり体験してみると全然違いました。」

    ■撮影はどこで行っていたのですか。

    「ちょうど去年の今ぐらいの時期に新潟でやっていました。記録的な大雪とかも降って、現場はすごく寒かったです」

    ■「食事があまり美味しくない」とおっしゃいましたが、その辺も当時を再現されていたのでしょうか。

    「黒パンやおかゆを食べるシーンがあったんですけど、特に僕は黒パンを夢中で食べるシーンもあって。黒パンって酸味と苦味があってモソモソしているというか、いつも食べているふわふわのパンとは全然違うんです。僕の口に合わなかっただけだとは思うんですけど、それを何回も食べなくちゃいけなくて(苦笑)。佐久本さんも“これヤバイな!”って驚いていていました」

    ©️2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 @1989 清水香子

    ■ロシアの黒パンは独特の風味があるそうですね。でも、劇中ではそれがほしくて取り合うという場面も描かれていて。

    「僕も“取り合う”ってなっていたから、美味しいかと思っていたんですけど、まさかこんなに酸っぱいとは(笑)。腹持ちはいいのかも知れないんですけど。でもあれもずっと食べていると美味しく感じるようになるらしいんです。なんかそういう状況にまでなるっていうことも、また酷い状況だったんだなと思いました」

    ■現場はどんな雰囲気でしたか。錚々たる先輩方と共演されたと思うのですが。

    「本当に皆さん、優しい方ばかりでした。二宮さんとご一緒するのは今回が初めてだったんですけど、実が山本に懐くという関係性でもあったので、最初から積極的に話しかけるようにしていたんです。そしたら二宮さんの方から、“おはよう!”って気軽に声をかけてくださり、“体調大丈夫?”とか、すごく気遣ってくださって嬉しかったです。。松坂(桃李)さんは事務所の先輩なので、これまでもお会いする機会はあったんですけど、現場ではこれ以外の作品のお話とかもさせていただけて。以前より距離が縮んだ気がします!佐久本さんとは相棒ということもあって仲良くさせていただきました。僕より7歳上なんですけど、同世代というか、同じ目線で話していいよって言ってくださって。僕からいろんな相談ができましたし、佐久本さんからも相談してくださることもありました。僕としては佐久本さんがいてくださっったからこそ、今回、実という役を上手く演じられたのかなと思います。今でも連絡を取って仲良くさせていただいてます。でも、本当は佐久本さん、人見知りらしいんですよ。だからそんな中で僕には連絡をくださったり、アドバイスをくださったりするので嬉しいです!特別感がありますよね(笑)」

    ■二宮さんとは、山時さんがハーモニカを吹いて、二宮さんが歌うというシーンもありましたよね。

    「二宮さんが引っ張ってくださって、僕がそれに合わせるという感じでした。僕のほうを見てリズムを取ってくださって、すごくありがたかったです。ハーモニカは朝ドラの『エール』に出演した時に練習もしていたので、わりとスラスラと吹けました」

    ■主演としての二宮さんはどうでしたか。

    「本当にチームを引っ張ってくださいました。“よし行こう!”とか“みんな頑張るぞ”みたいに気合いを入れてくださることもありました。あとは監督とこれから撮るシーンの確認とかをしてくださっていて、その会話を聞くことで、僕らも内容が理解できたりして。シーンに対する理解が深まりました。本当に僕からしたら神様のような存在でした」

    ■瀬々監督はどうでしたか。

    「アドバイスはくださるのですが、自由にやらせてくださいました。あと、僕が年齢的に22時までしか撮影に参加できないので、僕のいるシーンはそれまでに撮影を終えなくちゃいけなかったんですけど、監督が“大丈夫。そこは俺が何とかするから”とおっしゃってくださって。そこでもう“大好き!”ってなりました(笑)。少し怖そうな印象を持つ方もいますけど、笑った顔はすごくかわいい方なんです(笑)」

    ©️2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 @1989 清水香子

    ■作品を観てくださる方に一言お願いします。

    「シベリア抑留という言葉は、僕ら10代でも知っていると思いますし、何より愛とか、大切な人を思う心とかを感じてもらえる作品だと思います。僕も改めて希望を持ち続けるとか、諦めないことの大切さをこの作品から感じたので、皆さんにも劇場でそれを感じていただけたら嬉しいです」

    ■そして、映画『散歩時間 ~その日を待ちながら~』も、『ラーゲリ~』と同じ12月9日から公開となりますね。こちらでは中学3年生の香取光輝役を演じられていますが、コロナ禍でさまざま行事などが中止となる中、好きな人へ想いを伝えられずにいる男の子という役どころで、何となくご自身と重なる部分も多かったのではないでしょうか。

    「そうですね。自分が体験したことをそのまま演じたみたいな感覚がありました。撮影したのは僕が高校1年生の時だったんですけど、修学旅行がなくなってしまうとか、1年前の自分を持ってくるみたいな感じでやりやすかったです。テーマとしては、大変だったこともいい想い出になるし、いい未来があるよってことなんですけど、僕自身が1年前のことをそんなふうに感じていたんですね。中学3年生の時ではなくて、高校1年生になってから、中学3年生を演じられたことで、そのテーマもすごく理解ができたから、より共感して演じることができました」

    ■今後、こんな作品や、こんな役を演じたいというようなものはありますか。

    「身体を動かすことが好きなのでアクションはやってみたいです。アクロバットとかも練習してみたいと思っています。あとは時代劇とか、自分が経験していない昔のことを扱った作品もやってみたいなと思いました」  

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    【MOVIE INFORMATION】

    ©️2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 @1989 清水香子

    映画『ラーゲリより愛を込めて』
    12月9日公開

    原作:『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(辺見じゅん著/文春文庫刊)
    監督:瀬々敬久
    脚本:林民夫
    企画プロデュース:平野隆
    出演者:二宮和也 北川景子
    松坂桃李 中島健人 寺尾聰 桐谷健太 安田顕 
    奥野瑛太 金井勇太 中島歩 田辺桃子 佐久本宝 山時聡真 奥智哉 渡辺真起子 三浦誠己 山中崇 朝加真由美 酒向芳 市毛良枝
    配給:東宝
    ©️2022映画『ラーゲリより愛を込めて』製作委員会 @1989 清水香子


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    【共通テーマ音楽コラム「冬に聴きたい1曲」】

    back number「クリスマスソング」

    去年の冬、1日に4回くらい聴いていました(笑)。僕、クリスマスが大好きなんです。5人家族で、チキンとかを買って、家族でパーティをするのが恒例行事です。普段から音楽はよく聴いてはいるんですけど、人気の曲しか聴かないので詳しくはないです。J-POPやたまにHIP HOPも聴いたりしています。

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    【プロフィール】

    山時聡真(さんときそうま)
    2005年6月6日生まれ。東京都出身。最近の出演作は、映画『流浪の月』『死刑にいたる病』『CUBE 一度入ったら、最後』『約束のネバーランド』、ドラマ「この初恋はフィクションです」「生徒が人生をやり直せる学校」「ひきこもり先生」「ここは今から倫理です」など。現在公開中の映画『散歩時間 ~その日を待ちながら~』にも出演している。

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    Text 瀧本幸恵
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