3月8日に幕を開けるミュージカル『RENT』で、2022年に続き再びマークを演じる平間壮一さんにインタビュー。2月1日に33歳となった平間壮一、“第3章”へ突入か…?
■まずはお誕生日おめでとうございます。
「ありがとうございます。33歳か~! 誕生日当日は『RENT』の稽古と、『キングアーサー』の本番をやってお家に帰りました(笑)」
■凄まじいスケジュールですね。『RENT』のテーマは“命を燃やす”でもありますし、壮一さんはまさに命を燃やしている最中なのかな?と。
「そうですね(笑)。燃やせていればいいんですけれど…、自分の中で切り替えが必要になってくるのでね。僕の悪いクセで、1つのことでずっと忙しいんだったら全力でいけるんですけど、やはり他のことが入ってくると、集中できてないんじゃないかな?と思って、うわ~!って気持ちになったりします」
■現在は東京公演を終えたところなんですよね。
「なのでまだ『RENT』に浸かれていなくて。どんだけ地方公演の間とかで期間が開いても“やるよ”ってわかっていると、振付だったりセリフもそうですけど頭の片隅から抜けきらないんですよ。でも、本当に大千穐楽迎えました!ってなったら、2日後くらいに全部思い出せなくなります」
■そこが本当の切り替え場所なんですね。
「そう。だから今はちょっと自分の中で中途半端感はありますよね。でもこうやって呼んでいただけるのは本当にありがたいことですし、自分なりの全力で頑張ってますよ(笑)」
■応援することしかできませんが…頑張ってください!
「ハイ(笑顔)」
■今回は2020年に引き続き、マークを演じられます。この2年を経て、ご自身の中でマークに対する印象の変化であったり、現在だからこそのイメージはあるのですか?
「前回は、あの個性的なキャスト達、いろんなところから集まってきたプロフェッショナルでそれぞれのこだわりを持った人達と一緒に舞台をやってきたんですよね。だから、それぞれが舞台ってこうだよなって思っている人と、どうやったら1つにまとまるんだろう?ってことを、マークってそんなにリーダー気質じゃないのに考えていた自分がいたんですよ。(演出家の)アンディもコロナ禍で来れなかったですし。それでちょっと、これは違うな。頑張りすぎた自分がいたなって、終わった時に思ったんですよ。その頑張りは誰にも作用してなかったなって。なので無理するのは良くないなと思って、今回はフラットな感じでいます」
■今回は、アンディさんがいらっしゃるんですよね。
「はい。なのですべて任せられるし、アンディと一緒に稽古してるから、みんなのこともより信頼して一体感が出ている気がします」
■そうでしたか。前回の公演を観劇させていただいて、特に印象に残っているシーンが、エンジェルが死を迎えたシーンでマークが言葉を詰まらせたところです。思わずもらい泣きしてしまいました。
「いやいや」
■ご自身は2015、2017年にはエンジェルとして舞台に立ちました。その経験も、壮一さんのマークの中にあるのでしょうか?
「いやぁ…そこが『RENT』の難しいところですよね。完全なマークだとしたら、泣いてはいけないんです。だから、僕自身も悔しかったし、自分的には失敗なんですよ」
■それは違うんですか?
「僕的に、マークとしてはね。自分の感情と表現したい気持ちと、嘘つかない今の気持ちとのせめぎ合いでした。ずっと。どうしたって、楽しかったり哀しかったり、過去にやってきた『RENT』のいろんな想い出を、あえて嘘をついて哀しくないよって涙を振り切ってまでマークとしてお芝居することもまた嘘なんじゃないかな?とか、そういう難しいところまで行ってて」
■うんうん……。
「そうなんですよ。別に失敗じゃないかもしれないし、絶対に泣いてはダメってことでもないと思うんですけどね。でも自分のプランとしては、泣きたくないなって思ったりしています」
■今回は前回からのメンバーに加え新しいメンバーも入ったお稽古現場は、どんな手応えなんですか?
「どうなんでしょう?(笑) まだ僕も毎日フルで稽古に参加できているわけではないので。でもみんなも進みが早くてテンパっているというか、形をまず覚えるのにいっぱいいっぱいで、芝居面でアンディの稽古を受けた人はまだそんなにいないんじゃないかな? 今はみんな真面目に勉強してる感じなので(笑)、これからが楽しみな感じですね」
■本誌のインタビューで甲斐翔真さんにお話を伺った時に、「壮一さんがいてくれるだけで心強いです」とおっしゃっていました。
「え~なんでなんだろう?(笑) 逆に僕も翔真がいてくれて、めちゃくちゃ助かってますよ。今回は新しく(古屋)敬多くんが、翔真とのWキャストでロジャーを演じるんですけど、彼もすごく雰囲気が良くて」
■敬多さんとは初めてですか?
「いや、実は10何年前に一度会ってはいるんですよ。共通の知り合いと一緒に焼肉を食べたことがあります。仕事での共演は、初めてです」
■どんな方なんですか?
「すごく男らしくて、優しい兄貴って感じ。自分が10代の頃から芸能界でやってきたとは思ってないような、いいあんちゃん!って感じです(笑)。ロジャーとなった時は声の出し方とかも考えていて、翔真とはまた違ったそれぞれの向き合い方をしていますね」
■そしてマークは今回も花村想太さんとのWキャストですね。
「想太とは一番絡んでないんですよね。一緒に舞台に立つわけでもないし、お互いのマーク像について話し合ったこともないし、ちょっとカンパニー外の人?くらい、お互いに遠い顔をしてます(笑)」
■そうなんですか?(笑)
「アンディの稽古も、ちゃんと一人ずつ“キミのマークはこうだよ”“キミはこう”ってやっているから、お互いに共有することもないんですよね。ただ、素敵だな…♡と思って観ています(笑)。いや本当にみなさん素敵なんですよ。前回はすごく悩んで考えてやっていたミミ役の八木ちゃん(八木アリサ)も、今回はすごく顔が明るくなっていて、“八木ちゃん楽しそうじゃん!”って声をかけると“うん、アンディもいるしすごく楽しい!”って返ってくる感じがすごく勝手に嬉しいんですよね。みんな、アンディが来日する前の歌稽古とかも、前回言われたことと同じことは絶対に言われたくないとか、意志を持ってやっていることに素敵さを感じています」
■熱いですね。
「みんな全力で立ち向かっている感じがいいな~と思います」
■それって、『RENT』ならではの空気感なんですか?
「ん~、『RENT』ならではっていうのが崩れてきているのかな?って僕は思ってます。『RENT』らしいとか『RENT』ならではと言われてきたようなところも、どんどん世代交代になっていくのか、前まではそれぞれが自分の意見をバーッと言って、“まるで動物園みたい! これが『RENT』だよね”みたいなことを言われてきたと思うんですけど、あえて、わざわざそうなる必要はないのかな?というか。まぁなりたい人はなっていいし、無理してそこにならなくてもいいし。だんだんと『RENT』らしさがわかんなくなってきたかな。稽古もまだまだこれからだから、これからどうなっていくのかわかんないですけどね」
■楽しみにしています。それでは今年…といってももうすぐ3月ですが、今後はどんな1年にしたいですか?
「今までがむしゃらに頑張ってきた結果、今回の『RENT』の稽古に入って気づかされたことが1つありまして。やっぱり(役者として)他人の人生のことばかり考えているわけじゃないですか。しかも創られた本の中の、何ヵ月か経ったら終わってしまうという世界に、自分の人生を使っているわけで。『RENT』のオーディションに最初に受かった8年前くらいから、自分自身のことを考えたことってあんまりないなと。そう考えた時に、大事なことに気づいたんです。自分自身ともそうですけど、向き合うってことをしてこなかったなって。自分は本当はこれがやりたいんだって言うこともやめてきていたんですよね。で、33歳という大人になった今、“自分はこうでありたい”ってちょっとくらい言ったっていいんじゃないかな?って思ったんです。自分と向き合う、人と向き合う、話し合いをする。それが結果ちょっと波風立てたって、向き合うことをやめないほうがいいんじゃないかな?と、最近僕は気づきました」
■「『RENT』のオーディションに初めて受かった時」というのが、1つの節目なんですね?
「“平間壮一、第2章”が始まった時ですね。そこからお芝居にのめり込んだというか、それはそれでいい時間だったと思っていますけどね。じゃあこの先は?ってなった時に一度、自分に立ち返らないとわからないな…っていう感じが、自分に降りかかってきましたね。なので、もっと時間を上手く使っていくやり方を考えていこうと思います」
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【共通テーマ音楽コラム「あなたにとってのラブソング」】
『キテレツ大百科』エンディングテーマ「はじめてのチュウ」
最近、これに癒されています。本番前の楽屋でも聴いてるんですよ。あのアニメ声を聴いていると、張りつめているものがちょっと抜けるんですよ。初めてのチュウか~♡って、全然関係ないことを考えてリフレッシュしてます。
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【プロフィール】
平間壮一(ひらまそういち)
1990年2月1日生まれ。北海道出身。近年の出演作は、ミュージカル『キングアーサー』『ヘアスプレー』『The View Upstairs-君と見た、あの日-』『ドン・ジュアン』『The Last 5 Years』『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』など。今後は、音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』(6月開幕)、a new musical『ヴァグラント』(8月開幕)などが控えている。
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【STAGE INFORMATION】
ミュージカル『RENT』
3月8日(水)~4月2日(日) 日比谷シアタークリエ
脚本・作詞・音楽:ジョナサン・ラーソン
演出:マイケル・グライフ
日本版リステージアンディ・セニョールJr.
出演者:花村想太/平間壮一(Wキャスト) 古屋敬多(Lead)/甲斐翔真(Wキャスト) 遥海/八木アリサ(Wキャスト) 加藤潤一/SUNHEE(Wキャスト)
百名ヒロキ/RIOSKE(Wキャスト) 佐竹莉奈/鈴木瑛美子(Wキャスト) 塚本直 吉田広大
チャンヘ 長谷川開 小熊綸 ロビンソン春輝 吉田華奈 Zinee
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【クレジット】
Photo 大川晋児
Text 三沢千晶
Hair&Make-up菅野綾香
Styling岡本健太郎
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