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    2025年12月5日 リウ・シウフー(劉修甫)×ツァオ・ヨウニン(曹佑寧) 映画『ピアス 刺心』インタビュー




    リウ・シウフー(劉修甫)
    ツァオ・ヨウニン(曹佑寧)

     フェンシング選手の兄弟、その愛と疑念が対立するサスペンス・スリラー、映画『ピアス 刺心』が12月5日に公開。兄弟役を演じるリウ・シウフー(劉修甫)さん×ツァオ・ヨウニン(曹佑寧)さんのインタビューをお届けいたします。

    ■本作の出演オファーがきた時の感想と出演を決めたポイントを教えてください。

    ツァオ・ヨウニン「脚本を読んだ時、この物語の一人ひとりの登場人物についてやその人間関係などの、ありとあらゆることに対して、なぜそういう結末になっていってしまったのかと多くの疑問を持ち、とにかくその理由を知りたいと、すごく好奇心が掻き立てられました。また、僕が演じる兄ジーハンも、僕自身からそこまでそんなに遠く離れている人物ではないなと思ったんです。とは言え、なかなか理解できない人物ではありますが、僕ならジーハンを、少しだけだとしても理解することはできるんじゃないかな、と……それが僕が出演を決めた最大の理由でした。挑戦できる役でもあったので、僕はどんなことがあってもこの役をやりたいと思いました」

    リウ・シウフー「脚本を読んで僕が最初に感じたのは、この物語はとても美しいということでした。でも、その時はなぜそう思ったのか、理由は分からなかったのですが、とにかく美しいな、と。その後、たくさんのリハーサルを重ねてクランクインして撮影が始まったのですが、そのリハーサルを何度もしていく段階でやっと分かったんです。この作品は、僕が演じる弟ジージエの、兄であるジーハンとの関係性によって物語が展開していき、最終的にジージエがする、ある意味では勇気あるとも言える決断が描かれます。つまりこの作品においてとても重要なのは、ジージエの考えや行動を表現していくということであり、それを観客に伝えていかなければならないという、“人物を表現する”ことなのだと理解しました。これは映画に限らず文学作品や小説とかでもそうだと思いますが、世の中にはいろんな人がいて、いろんな考え方や行動があり、それらに対する認識も当然それぞれ違いますよね。この作品では、そんな多様性も伝えようとしているのではないでしょうか。そんなふうにも考えて、“ああ、美しいな”と思い、お引き受けしました」

    ■“美しい”と感じられるシウフーさんは感受性がとても豊かなのですね。

    シウフー「子供から大人へと成長していく過程の中で、自分の物事に対する見方や考え方は、ひょっとすると他者と少し異なるところがあったかもしれません」

    ■お二人ともとても難しい役どころだったと思いますが、演じるのにとくに難しかったところは?

    シウフー「ジージエという役柄について考えて僕なりに思ったのは、役に入り込む方法はいろいろあるということです。たとえば、ジージエに同情し完全に理解を示して演じるというのも一つのやり方だと思います。でもそうではなくて、違った視点から人物を観察してみると、また別のやり方ができるかもしれないし、いろんな方法と可能性があると思いました。でもこの作品の撮影にあたっては、監督のやり方が僕にとってすごく良かったと思います。監督が撮影現場でまず僕たちに言ったのは、“単に役を頭で理解するのではなく、むしろ彼らがどう育ってそんなふうになっていってしまったのかということを、演技を通して実際にその人になりきることで、この人物を体験してほしい”ということでした。僕は自分がジージエになりきることによって、その時初めて彼のキャラクターについての理解が出来るようになっていったと思います」

    ヨウニン「僕が難しいと思ったのは、僕自身は円満でとても幸せな家庭に生まれ育ったので、ジーハンのように家族からの愛も理解も得られなかったのとは全く違い、そういった経験のない自分がジーハンをどう表現すればいいのか、という点でした。でも、ジーハンも生まれてから幸せを感じたことが全くなかったのかと言えば、実はきっとそうではないんじゃないかと思います。人は誰しもいろんな出来事が起こることによって、なぜ家族は自分を理解してくれないのか、なぜこんなに家族の会話が少ないのか、と思うことが、時にはあると思います。たぶん僕自身にもそういうことが一度もなかったわけではないと思うので、そのわずかに経験した気持ちや心情的な部分をどう投影するのか、というところが、僕にとってなかなか難しい部分ではありました。でも監督が求めるように、自分がその人物になりきることで解決していきました」

    ■撮影中ずっと役柄になりきっているのは辛くなかったですか?

    シウフー「はい、辛かったです。でも楽しかったですよ。なぜなら、やっぱり僕は、ある人物をいろんな角度や視点から解釈して、演技を通してその人になることができるという、この仕事が大好きなんです。映画でも小説でも音楽でも結局全てはそこだと思うのですが、人間の感情や情感をどう表現するかというところですよね。なので、人間のすごく複雑な感情やなかなか理解されない情感にも僕は喜んで関わっていきたい。僕はすごく理解されがたい人物を演じたいと思っているんです」

    ヨウニン「正直、撮影中にそんなに辛いことはあまりなかったのですが、どちらかと言うと、僕は撮影に入る前の段階で、自分がこの人物になりきるためにどんな心の準備をすればいいのかというのが、結構大変で辛かったです。ジーハン役を一生懸命やるには、時間も体力も、たぶん精神力もすごく必要になってくるし、自分が過去に辛いと感じた経験を役に投影してみても、やっぱりうまくいかなかったり大変だと感じたりすることもありました。そんな時には役作りの参考として、殺人鬼を題材にしたドキュメンタリー映画を観ました。そういった人物の心情的な変化や気持ちをなるべく理解しようとして、それを役に取り入れたりもしたのですが、その作業も結構大変で辛かったですね」

    ■ヨウニンさんは元アスリートであり『KANO 1931海の向こうの甲子園』のエースピッチャー役をはじめ、恋愛映画などでの爽やかさがとても印象的ですが、本作ではその笑顔すらもスリリングに感じさせられたことや背を丸めた姿などにも驚かされました。そういった表情や仕草の見え方にもかなり気を遣われたのでしょうか。

    ヨウニン「僕自身、笑い方や目線や目つき、歩き方とかそういったこと全てに対して、特別に何か工夫したという意識はなかったんですよね……最終的に完成した映画を観た時は、僕自身も自分の姿にはすごく新鮮なものを感じましたから。これはきっと撮影当時の自分の役者としての状態が、そのまま忠実に記録されているということなのだと思います。だからその時の心の状態に従って、自然とそうなっていたということなんじゃないかな。ただ、フェンシングのシーンについてはマスクをしていて表情が見えないので、その人物のキャラクターや心情が感じられるような見せ方のデザイン的な演出が加えられていると思います」

    ■シウフーさんは本作でも、以前の出演ドラマ「子供はあなたの所有物じゃない」(#2「ネコの子」)でも親からの学力に対するプレッシャーに苦しむという難しい役どころでしたが、普段はどのような人ですか?

    シウフー「そうですね……すごく正直に言いますが、普段は周りの人とあまりかかわりを持たない人だと思います(笑)。今ヨウニンさんも横で笑っていますけど(笑)、僕にとっては自分が見た世界が全て。本当に自分の中の世界を生きている人間です」

    ■兄弟二人だけのシーンも多いですが、演技についてお二人で話すこともありましたか? 撮影現場ではどんな様子だったのでしょうか。

    シウフー「二人だけの場面での芝居をどうするかということについて、実は監督の一つのやり方がありました。監督は現場での役者の状態をいつも鋭く観察していて、役者同士の協調を図るのがとても得意な人です。具体的に説明すると、役者同士がそのシーンでどんな芝居をするかという相談をして、合意したところでやる、というやり方をさせないんです。監督はまず僕たちそれぞれに異なる課題を与えて、“それを目標としてここまでやってほしい”と。それぞれに与えられた課題はお互いに全く知らないんですよ。だから僕たちは監督の指示によって、相手の芝居を見て、自分がそれにどう対峙するか、というやり方を常にしていました」

    ■さて話は変わりますが、お二人自身のことも少しお聞きしますね。日本の俳優やアーティスト、作品でお好きなものはありますか?

    シウフー「僕は安藤サクラさんが主演したドラマ『ブラッシュアップライフ』が好きで観ていました」

    ヨウニン「僕は永瀬正敏さんが大好きです! いつも心から応援しています」

    ■最後に読者へメッセージをお願いします。

    シウフー「読者の皆さん、この映画はオープンな観点から愛とは何かが深く描かれているとても特別な作品です。だからこそ、映画館に足を運んでいただいてご覧になってほしいです。ぜひお楽しみください」

    ヨウニン「僕も皆さんにぜひ映画館に行って観ていただきたいです。そして観終わったあとに“愛とは何か”という本作のテーマについて探求したり議論したりして、自分なりの考えを持ってください。またそれを理解することによって、自分自身の愛についてだけでなく、相手の愛を感じたり受け入れたりする心のスペースも持ってほしいです」

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    【音楽コラム「MY WINTER SONG」】

    リウ・シウフー
    坂本龍一「Merry Christmas Mr. Lawrence」

     皆さんもご存じのように、台湾(の山以外)では雪が降り積もることがありません。僕は台湾で雪が降るというのはどんな感じかなと想像してみます。この曲の、とくにイントロの流れを聴いていると、もし雪が降ったらこんな光景になるんじゃないかなというイメージが湧いてくるんですよね。だからこの曲が浮かびました。

    ツァオ・ヨウニン
    一青窈「ハナミズキ」

      一青窈さんの『ハナミズキ』は映画にもなっていて、その挿入歌が浮かびます。新垣結衣さんと生田斗真さん主演の恋愛映画です。聴くとある場面を思い出す、ということではないのですが、たぶん僕はこのメロディーに冬を思わせられるのだと思います。フィーリングみたいなものですね。

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    Text:小俣悦子
    通訳:サミュエル周


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    【プロフィール】

    リウ・シウフー(劉修甫)
    1997年7月31日台湾・台中市出身。デビュー作「子供はあなたの所有物じゃない」‐第2話「ネコの子」(18)で第54回金鐘奨ミニシリーズ部門の最優秀新人俳優賞にノミネートされる。2021年には台北映画祭の「スーパーノヴァ」賞を受賞した。その後、舞台や映画出演のほか、雑誌や広告のモデルとしても活躍。これまでの主なTVシリーズ出演作は「悪との距離」(19)、「額外旅程 (英題:Bonus Trip)」(22)、「鬼之執行長 (英題:Trick or Love)」(23)、映画出演作に『俺の中の奴ら (原題:複身犯)』(21)、『ウソつきな僕が君を好きなのは』(25)など。本作『ピアス 刺心』で初主演を務め、ローマ・アジア映画祭最優秀男優賞を受賞、同年の第27回台北映画賞で最優秀新人男優賞にノミネートされた。

    ツァオ・ヨウニン(曹佑寧)
    1994年4月24日台湾・台北市出身。小学生の時から野球を始め、2012年にAAA世界野球選手権のチャイニーズタイペイ代表に選ばれるなど野球選手として活躍する。2013年、映画『KANO-1931海の向こうの甲子園』のエースピッチャー・呉明捷役で俳優デビューを飾り、同作の演技で2014年の台北映画祭で助演男優賞を受賞、第51回金馬奨では最優秀新人俳優賞にノミネートされた。2016年に野球選手を引退し、芸能活動に専念。これまでの主な出演作には、TVシリーズ「人際關係事務所 (英題:Befriend)」(18)、「極道千金 (英題:Triad Princess)」(19)、「華麗計程車行 (英題:A Wonderful Journey)」(24)、映画『可不可以, 你也剛好喜歡我 (英題:Do You Love Me As I Love You)』(20)、『スリングショット』(21)、『夏のレモングラス』(24)などがある。

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    【MOVIE INFORMATION】


    © Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné

    映画『ピアス 刺心』
    2025年12月5日(金) より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー


    HP
    https://pierce-movie.jp/

    監督・脚本:ネリシア・ロウ(劉慧伶)
    出演:リウ・シウフー(劉修甫)、ツァオ・ヨウニン(曹佑寧)、ディン・ニン(丁寧)
    プロデューサー:サム・ウェイシ・チュア、ジェレミー・チュア、パトリック・マオ・フアン、イザベラ・イゲル、ジョン・M・ロウ
    共同プロデューサー:エブリル・クオ、シュー・グオルン、アンジェイ・ルツャネク
    エグゼクティブ・プロデューサー:ジョン・M・ロウ、ダニエル・ヤング、ジェニファー・ジャオ、リン・ティエングゥイ
    アソシエイト・プロデューサー:エリック・メンデルソン
    撮影監督:ミハウ・ディメク
    編集:ネリシア・ロウ、エリック・メンデルソン
    プロダクション・デザイナー:マーカス・チェン、シュ・グゥイティン
    衣装:リー・ルオシュン
    作曲:ピョートル・クレク
    サウンド・デザイナー:ドゥ・ドゥーチー、ウー・シュウヤオ

    原題:刺心切骨
    英題:Pierce
    字幕翻訳:中沢志乃
    宣伝美術:鈴木規子
    予告編:原奈保子
    後援:駐日シンガポール共和国大使館、台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
    配給:インターフィルム
    © Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné


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