■『メリリー・ウィー・ロール・アロング』、2013年版、またはブロードウェイ版はご覧になっていますか?
「2013年版は資料で観させていただきました。海外版は、たまたまTVでこの作品の特集みたいなのをやっていて、それをたまたまこのお話をいただいた数日後に観たんですよ。すごくタイムリーで、“天も味方してくれているのかな?”って思いました(笑)」
■どんな印象でしたか?
「日本語版の本を読ませていただいて感じたのは、日本人が理解できる繊細さというか、感情がすごく細やかに描かれているな、と。ただ、自分がこれをやるんだ…って思うと、もはや研究みたいになっちゃっていました(笑)。もちろんすごく感動したんですが、このミュージカルって“逆再生”していくんですよね。ハリウッドのプロデューサーとしては大成功を収めたフランクだけれど、大切な物をどこかに捨ててきてしまった…という人生を逆再生していくのは、時間通りに演じるより残酷だし、(着地点を)いいところに持って行くのか行かないのかは観ているお客様の心に委ねられていると思います。純粋だった頃の自分を、本人は悲惨な状況から見つめ直していくんですけど、もう結果は変わらないじゃないですか。答えは知っているけど、“じゃあなぜそうなったのか?”ってことを、お客さまにわかってもらえるんじゃないかな?と思うんです。だから今は、フランクを演じられることにワクワクしています」
■演じられる“フランク”についてはいかがでしょう? 共感点などありましたか?
「気持ちがわからなくもないんですよね。以前『サンセット大通り』でも舞台のバックステージものはやらせていただいたんですが、今作のほうがより理解できるかなと思っています。自分が思っていることとやらなきゃいけないことが違っていた時、どちらを選ぶのか?ということだったり、友達、仕事、家族、いろんな選択の連続でフランクは壁にぶつかり、過去を振り返っていくので、本を読んでいて苦しかったですが、でも、“人ってそうやって生きているよね”って。俳優もそうやって生きているし、プロデューサーも。いろんな人達がいろんな選択を迫られて生きていく中で、この物語があるから、特別なことじゃないんだなって」
■確かに、そうですよね。生きていると選択を迫られてばかりですからね。
「そうですよね。“プロデューサーのフランク”としてショーアップされていますけど、自分に置き換えてみると、そういうふうに思う瞬間もあったなと思いましたし、お客さまにもそういう瞬間が生まれるんじゃないかなと思います。しかもいい選択ばかり出来る訳じゃない。そういうスッキリしない選択をこうやって物語にしてくれていると、あとから自分の人生に当てはめて消化される気がしますよね。だから台本を読んでいて苦しかったです…。僕は元々、あまり過去を振り返る性格ではないですけど、自分の親友を思い出して、“何をやってるかな?”とか思い起こされたりしました」
■ご自身を振り返る機会にもなったんですね。
「振り返らざるを得なかった。じゃないと、フランクを演じることはできないと思います。自分も振り返って、経験を引き出していかないと」
■俳優さんが“役に入る”って、イコール“自分と向き合う作業”でもあるのかな?と思うのですが。
「きっと誰もが、今起こっていることに対しての選択をしながら生きていると思うんですよ。ただ俳優は、役が来た時に、その役の状況を思い起こさないといけないというか、たとえ今すごくハッピーな状態でも、マイナスなほうに気持ちを持って行かないといけないっていうこともありますよね。でもそれをやることで自分の普段の人生よりも役のほうがおもしろくなっちゃうこともあります(笑)。だって2~3時間の中で、山あり谷ありの1つの人生をゴールするわけだから、夢中になっちゃいますね」
■(笑)1度の人生なのに、たくさんの人生を生きている気がします。
「そう。ただ、知らないうちにすっごい疲れてますね(笑)」
■(笑)でも、自分の中に、経験として積み重なっていきますよね。
「だから最後のカーテンコールはとても嬉しいです。“辿り着いた!”って思えますよね」
■今回、フランクの親友を演じられるのがウエンツ瑛士さん(チャーリー役)と、笹本玲奈さん(メアリー役)。みなさん同い年なんですね?
「そうなんですよ。でも玲奈ちゃんは事務所の先輩でもあるし、ウエンツくんも小さい頃からTVで観てたから“同い年”って言われてもと思っていました(笑)。でも、実際に会ってみるとやっぱり同い年って関係あるんだなって感じたんですよね。会ってすぐに距離が近くなった、というか。いろんなことを話せたし、作品についてもスッと“こうしたいよね、ああしたいよね”って話ができたので、本当にありがたい“親友達”です(笑)」
■同年代ならではのお話もされました?
「しました(笑)。オフィシャル撮影では2通りの写真を撮ったんですよ。20年前、親友だった頃の3人と、大人になった今の3人を。“大人になると友情を感じる写真を撮ることってなかなかないから、ちょっと恥ずかしいよね。できる?”とか言いながら(笑)。で、撮った写真がコレ(チラシビジュアル)なんですけど、“やっぱり本当の20代とは違うけど、振り返った時の僕達だからいいんじゃない?”って(笑)。だからこの3人は初めてなのに初めてじゃない感じがしてすごく嬉しいです。“1人じゃない”って思えるから」
■今作の物語のように、過去に戻って確かめてみたいことはありますか?
「僕、東京に出てくることを決意して、それを母親に言うのをためらったんですよね。それで実際に言ったのが、上京する3日前だったんです。その時の母親の本当の気持ちと、僕が正面から観ることのできなかったあの時の母親との関係性は確かめてみたいです。学生の頃は母親と全然口もきかなかったですからね(笑)。今はよく話もしますし、よく会いにも行っていますよ」
■では、元基さんには20年前のフランクのように夢を応援してくれた友達はいますか?
「いますね~。福岡から上京する時に、空港のデッキに友人達が並んで“がんばってね!”って駆けつけてくれたのは、いまだに思い出します。それを飛行機の窓からずーっと見て、泣いてましたね。“これから真っ白な地図に自分の人生を描けるんだ”とワクワクしていたのに、いざ地元を離れるとなると、すごくさみしかったんですよね。つい最近、SNSで久しぶりに連絡したら、“リモートで集まろう”ってことになって。俳優同士ではあまりそういうことをやっていないんですよ。でも仕事と全く関係ない地元の友達とならやってみてもいいかな、とか思って(笑)」
■楽しそうですね。
「会わなくなった友達でも当時の思い出は共通だから、そう考えるとワクワクするんですよね。その間の経験は、お互いに全然違うし、それぞれツラいこともあったと思うけど、会いたいし顔を見たいし、会わなかった間の話をたくさん聞きたいって…。そう考えると、僕も振り返られるくらいの人生を歩んできたんだな…(笑)。でも、みんな僕を励ましてくれる人達だから、地元があって本当によかったなって思います」
■離れていても、そういう人達がいてくれると思うと、より頑張れますよね。
「うん、頑張れる! みんなの存在が“お守り”みたいです」
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【共通テーマ音楽コラム:朝の目覚めに聴きたい1曲】
Maroon 5「Misery」
僕、ずっとMaroon 5が好きで、目覚ましもこの曲をかけています。その前は、自然の音が好きなので“鳥の声”とかをセットしてたんですよ。でも自然が好きすぎて、心地よく寝続けちゃって(笑)。Maroon 5は無理なく気持ちを上げてくれるから、仕事前にもよく聴いてますね。
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【プロフィール】
■平方元基(ひらかたげんき)
1985年12月1日生まれ。福岡県出身。主演ミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」(フランク役/5月 東京公演 新国立劇場 中劇場 他)、ミュージカル「王家の紋章」(イズミル役/8月 東京・帝国劇場、9月 福岡・博多座)などが控えている。
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Photo ⇒ 後藤倫人(D-CORD)
Text ⇒ 三沢千晶
Hair&Make-up ⇒ 藤井康弘
Styling ⇒ 五十嵐堂寿
Costume ⇒ ジャケット¥98,000/ポリオリ、Tシャツ¥7,000/ブリッラ ペル イル グスト、パンツ¥26,000/オーベルジュ、チーフ¥7,000/アルクーリ(以上すべてビームス 六本木ヒルズ 03-5775-1623)、他 私物
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【STAGE Information】
ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』
東京公演:2021年5月17日(月)~5月31日(月) 新国立劇場 中劇場
愛知公演:2021年6月4日(金)・5日(土) 愛知県芸術劇場大ホール
大阪公演:2021年6月11日(金)・12日(土) 梅田芸術劇場メインホール
作曲・作詞:スティーブン・ソンドハイム
脚本:ジョージ・ファース
出演: 平方元基、ウエンツ瑛士、笹本玲奈、昆 夏美、今井清隆、朝夏まなと、
岸 祐二、上口耕平、渚 あき、中別府 葵、宮原浩暢 (LE VELVETS) 、
中井智彦、井阪郁巳、家塚敦子、三木麻衣子、森 加織、雅原 慶、高木裕和、
前田武蔵・荒井天吾(Wキャスト)
企画制作:ホリプロ
主催:ホリプロ アスミック・エース
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