6月4日より公開となる映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
――『るろうに剣心』シリーズがここに完結する。
観る前は、「これで最後……」と思うと、観たいような観たくないような複雑な心境だったが、エンドロールを見ながら、これほどまでに納得できる最後はない、と。
いろんな意味での「ありがとう」の気持ちが溢れ、これ以上の終わり方はないからもう観られなくてもいい、と思える幕の下ろし方だった。
まず、この『The Beginning』は『るろうに剣心』シリーズではあるが、私たちが知っている『るろうに剣心』シリーズではない。
主人公は“剣心”ではなく、“抜刀斎”だ。“剣心”は、“不殺(ころさず)”の誓いを立て、逆刃刀を持ち、人を決して殺めないが、“抜刀斎”はためらいなく人を斬りまくる。映画の冒頭わずか数分で、「今、一人で何人殺した?」とツッコミを入れたくなるくらいの死体の山ができ、「ああ、これは今まで観てきたものとは違うぞ」と認識させられる。今回の佐藤健は「おろ?」や、かわいく「~ござる」とは言わない。ちなみに、佐藤と同じく全シリーズに出演する江口洋介演じる斎藤一は、まだ新撰組の一員で、着物姿だ。
さらに剣心はこれまで通り圧倒的に強く、美しいのだが、そこに切なさと弱さが加わることで、全く違う人物になる。強さと弱さは対義語であるが、堅いものほど、壊れるときは一瞬であるような、強さゆえの弱さが“抜刀斎”にはある。この背中合わせにある“弱さ”が、物語全体のキーになっているようにも思う。
そして、これまでと最も大きく違うのが、今作が男女の愛を描くラブストーリーであること。
“剣心”の頬に刻まれた十字傷の秘密を握る雪代巴(有村架純)と、“抜刀斎”の間にどんな物語があったのか――すでに『The Final』で、剣心が妻である巴を殺し、巴の弟・縁(新田真剣佑)に復讐を挑まれる話が描かれているため、2人の辿る運命は決まっている。悲劇の結末は変わることはない。
ただそれでも、この物語は、観る者の心を捉えて離さないだろう。ここまで仲間への愛、師弟の愛、国家への愛など、さまざまな愛を描いてきた『るろうに剣心』が、最後に最も根源的な愛である恋愛に真っすぐに挑む。もちろん、そこには恋愛のキュンを100発100中で仕留める俳優・佐藤健の能力が存分に発揮されていることも書き加えておく。
そんな今までとは違うところだらけの『The Beginning』なのだが、見事なまでにこれまでの『るろうに剣心』シリーズの最後の一作としての役割を全うしている。
それは、主演も監督も同じで、同じ人物の物語なんだから、当たり前だよね、という類のものではない。『The Final』の時からはっきりと感じていたが、この作品に関わった人たちの“想い”がつながっているからだ。
だからこそ、“映画館で観てほしい”と願わずにはいられない。特にラスト数分には、このシリーズを見続けている人であれば、震えるくらいカッコいいシーンが待っている。
冒頭にも記したが、「これ以上の終わり方はない」と、本シリーズを愛していた人なら必ず思える “有終の美”を、目、耳、そして心に焼き付けてほしい。
(Text → 瀧本幸恵)
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【MOVIE Information】
『るろうに剣心最終章 The Beginning』
るろうに剣心 最終章 The Final /全国公開中
るろうに剣心 最終章 The Beginning /6月4日(金)全国ロードショー
原作:和月伸宏「るろうに剣心−明治剣客浪漫譚-」(集英社ジャンプコミックス刊)
監督/脚本:大友啓史
出演:佐藤健
有村架純 高橋一生
村上虹郎 安藤政信 北村一輝
江口洋介
主題歌:ONE OK ROCK「Broken Heart of Gold」
製作:映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会
制作プロダクション・配給:ワーナー・ブラザース映画
© 和月伸宏/ 集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会
HP https://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin2020/