最新情報
interview
    2022年2月12日 勝地涼 スペシャルインタビュー

     

     昨年10月、東京・本多劇場にて上演された舞台M&Oplaysプロデュース「いのち知らず」が2月27日、CS衛星劇場で初放送される。仲野太賀と共にW主演を務めた勝地涼に話を伺った。

    ■「いのち知らず」は、ご自身にとってどんな舞台であったと感じていらっしゃいますか?

    「自分が舞台に出るきっかけとなったのが、『シブヤから遠く離れて』(2004)という岩松了さん脚本の作品だったというのがありまして。演出を受けるのは2回目ですけども、前回、『空ばかり見ていた』(2019)の時に、“岩松さんとまたいつか”という気持ちで終わってしまっては何年先になるのかわからないし、やりたいと思った時に勇気を出して伝えることも大事だなと思ったんです。その想いが実現した舞台だったので、やっぱり言って良かったなと思いました。舞台中は、少人数というのもあって岩松さんとお話しする機会が多かったんですよ。その中で、岩松さんが“俺があと何本書けるのか?ってことを考えると…”ってことをポツリとおっしゃっていて。“自分が出演しつつ、面白い舞台を今後どれだけ書いていけるのか?って、考えたりするんだよなぁ…”って。なので、やはりこのタイミングでやれて良かったなってことをすごく感じました。それに、今回主役という形でやらせていただけたのも、役者としてすごくいい経験になりましたし、また課題が見つかったので、本当に良かったなと思います」

    撮影:宮川舞子

    ■公演が終わった今、振り返ってみて、今作はどういう意味を持っていたとお感じになっていますか?

    「岩松さんは正解を言ってくださらないので、自分達の解釈が合っているのかわからないんですけど、でも“現代の世の中で何を信じるべきなのか?”などは物語の中で感じましたし、人を生き返らせることができるのかできないのか?というテーマの裏にあるものは、やっぱり今の世の中に近いのかな?ということだったり。あとは、人間関係において、第三者の情報が入ることによって、これだけ仲の良かった人間が離れていく羽目になるとか、10代の頃に仲の良かった友達の中には、未だに仲のいい友達もいるけど会わなくなる友達もいて。それって何だろう?って考えた時に、自分達が仕事をしていく中で、同じところに立っていられるのか?いられないのか?ということだったりとか。そういうこともあるよな…っていうことは、いろいろ感じました。あとは岩松さんが、多くの戯曲を書いてきた中で、この段階で、青春…じゃないけど、男の友情や熱い部分を書いたっていうのも意外ではあったんです。これは僕の想像ですけれど、きっと岩松さんご自身の経験が入っているんだろうなって気がしたんですね。有名な話で言うと、(劇団)東京乾電池時代であったりを振り返っている作品なのかな?とか思ったりして。で、やっぱり稽古の空き時間とかに、その時代の話をすることが多かったんですよね。そこから想像するに、こんなことがあったんだろうな~、あんなことがあったんだろうな~と、振り返っているんだろうなって思いましたし、だからきっと、岩松さんの中に流れている“何か”なんだろうなと感じました。この作品を通して、役者としてだけじゃなく、生きていく上でのいろんなものをもらったような気がしますね」

    撮影:宮川舞子

    ■岩松さんの現場は、なかなか質問がしづらい空気が流れているとお聞きしましたが、今回はいかがでしたか?

    「初日かなんかに、台本が完成まであとちょっとというところで本読みをして、岩松さんが“この後の内容って聞きたい?”っておっしゃったんですよ。で、光石(研)さんとか役者みんなお互いに目が合って、“だ、大丈夫です!”みたいな(笑)。それに対して岩松さんが“そうだよね~。だいたいわかるでしょ”って言った時に、たぶんみんな“絶対にわかりません”って思ったはずです(笑)」

    ■(笑)。

    「みたいなことはありましたけど、なるべく聞かないようにはしてました(笑)。というか、聞いている余裕がなかったんですよね。本当にセリフが多かったし、セリフに追われながら、探りながらやっていたので」

    ■確かに、迫力の会話劇で、圧倒されました。勝地さんが演じるロクと仲野さん演じるシドが後半、激しくやり合うシーンなどは特に。

    「そうですね。なんか、ロクとシドだけではない(勝地と仲野である)瞬間が垣間見えることがあって。それがいいことなのかはわからないけど、僕には見えたんですよね。ロクがシドに嫉妬してたりするところとか、多少なりとも、自分の中に流れているものでもあると思うし。(仲野太賀という役者に)負けたくない、とか。でも、大好きな役者でもあるし、人としても大好きだし…とか、ロクとシドだけじゃない、いろんな感情が出てくる瞬間がいっぱいありました」

    撮影:宮川舞子

    ■また、ロクとシドだけではなく、モオリ(光石研)、トンビ(新名基浩)、安西(岩松了)、5人それぞれの関係性だったり、それぞれの相手への感情だったりにも、目が離せませんでした。その中で、光石さんとの共演はいかがでしたか? 映像作品での共演は多いと思いますが、なかなか舞台でご一緒することはないのではないか、と。

    「稽古場でも楽屋でもずっと太賀と一緒だったんですけど、だいたい2人で喋ってる内容としては、“やっぱり光石研には勝てん”“(役者として)恐ろしい!”っていう話ばっかりでしたね(笑)。光石さんは、僕らがセリフを全部入れてきてすごいよ!とか言うけど、僕らからするとそれがすごいことじゃなくて。その人物としてちゃんとその場にいて、どこを切り取ってもそう見えるっていう、そういう光石さんが本当にすごいと思うし、今回終わってから、自分が考えていたのはそこだったんですよ。光石さんみたいには立てていなかったな、と思うことがいっぱいあって。マイナス思考なくせにズケズケしていて言動が矛盾しているモオリという役でしたけども、“こういうヤツ絶対にいるよな”っていうのが伝わってくるし、“俺、おかしくなっちゃったのかな?”っていうセリフも、こちらがキュッと胸を締め付けられるくらいにリアルなので、その相手をしている役としては、すごくやりやすかったです。光石さん自身は“今日も間違えちゃった”とか言ってるんですけど、間違えててもその人に見えてるって、すごいし…悔しいですね。だからやっぱり、すげーなと思いました」

    撮影:宮川舞子

    ■では、役者としての岩松さんは、共演されていかがでしたか?

    「岩松さんは、今まで散々観てきて、今回も楽しかったですけど、なんか…ズルいですね(笑)。本当、岩松さんが出てくると、お客さんが岩松さんに惹きつけられる感覚っていうのがすっごいあります。“わ!”って思う瞬間がたくさんありましたしね。あとは、あれだけギリギリまで演出をつけていて寸前まで全然稽古をしていないのに、いや~よく立てるわ! 怖くないのかな?って思いました。すごかったです」

    ■新名さんとは『空ばかり見ていた』でご一緒されていますね。

    「新名さんは、その時からすっごい気になる存在だったんですよ。稽古場でも席が近くて、常に新名さんと喋っていましたね。“何だ? この人?”みたいな感じで、なんか気になるんですよ(笑)。新名さんは映像でも結構ご一緒しているんですけど、もっとガッツリやってみたいです。そもそも今回は、出てくるだけで空気が変わる人ばかりで、やっていて本当に楽しかったですね」

    ■今回、心に残った岩松さんの演出はありましたか?

    「自分が稽古を受けている時はわからなかったりしても、人が受けているのを観ていると、すごいよくわかるんですよ。あ~なるほど。だからこういうふうに見えちゃうのか…って気がつくんですよね。岩松さんは、“要は表面的なものじゃなくて、隠れているものがあるでしょう? でも隠れているものを出す、という意味じゃなくて…”とか、微妙なバランスで揺れているみたいな部分を指摘してくれるんです。例えば、自分が稽古でダメ出しされていたのが、“僕の感情がお客さんにわかりすぎちゃうのは勿体ないから”っていうのは結構ありました。伝わってないか不安なので、どうしても“こうですよ”って見せたくなるし、何回もやっていると表現が大きくなってきちゃったりした時に、すぐに言ってくれるんですよ。“あれだとちょっとわかりやす過ぎるかな”とか。で、言われるとやっぱり“ああ、そうか!”って思うんですよね。本当に勉強になります。岩松さん、今年も2本くらい(演出を)やられるのかな? その稽古場にずっと居たいな~って思うくらいです」

    撮影:宮川舞子

    ■勝地さんと仲野さんについて、公式パンフレットのインタビューの中で岩松さんが「2人には、わかりやすさや違いが組み込まれていないセリフを与えても大丈夫なんじゃないかと思う」とおっしゃっていました。それを受けて勝地さんは、ロクとどう向き合っていったのですか?

    「稽古に入る前から“そんな簡単なセリフじゃなくていいでしょ? 難しくていいでしょ?”みたいなことは言われていたので、そこは覚悟はしていたんですよ。岩松さんの本って、もう少し形になってから役者同士で空いてる時間に“これってこういう意味かな?”となってくるイメージだったけど、でもそれじゃ追いつかないと思った太賀と僕は、稽古場を出た先でいつまでも帰らずに、“これって俺はこういうつもりで言ってるけど…”とか話していましたね。自分の中だけで、稽古が終わって家に帰ってまた読んで…とやっても追いつかないものが多くて。もちろん、それは作業としてやってはいたんですけどね。なので、結構早い段階で太賀とは話していました」

    ■そういうふうに、太賀さんとの共通意識の擦り合わせの時間が大切だったんですね。

    「コロナ禍なので飲みに行ったりはできなかったんですけど、基本的に太賀とずっと一緒にいたので、稽古場を出て、横の公園で喋っていました」

    撮影:宮川舞子

    ■では、「いのち知らず」というタイトルにちなんで、ご自身の“命知らず”なエピソードがありましたら、お願いします。

    「最近はなかなかないですね…。むしろ、この企画をやりたいと言った時が命知らずだったかも。『空ばかり見ていた』の現場で、“太賀とやりたいから、もう1回やってくださいよ”みたいな(笑)。“命知らず”な提案だったと思います。岩松さんとは、また絶対にやりたいです。そして太賀とは、“また5年後やりましょう”って話しました」

    ■最後に、CS衛星劇場での放送にあたって、楽しみにされていることはありますか?

    「自分の舞台を映像で観るのは、本当に恥ずかしいです(笑)。なので、“光石研”という役者を、もう1回隈なくチェックしたいですね。自分のシーンというよりは、勉強のために光石さんを観ます(笑)」

    撮影:宮川舞子

    ・・・

    【プロフィール】


    勝地涼(かつじりょう)

    1986年8月20日生まれ。東京都出身。現在、ドラマ「ドクターホワイト」(カンテレ・フジテレビ系にて毎週月曜22時~)、「となりのチカラ」(テレビ朝日系にて毎週木曜21時~)が放送中。

    公式HP:

    http://www.web-foster.com/pc/artists/Katsuji/Ryo

    ・・・

    【STAGE Information】

    撮影:渡部孝弘

    M&Oplaysプロデュース「いのち知らず」

    CS衛星劇場にて、2月27日(日)午後2:00~4:15 テレビ初放送!
    https://www.eigeki.com/series/S73252


    2021年10月22日〜11月14日 東京・本多劇場ほか
    作・演出:岩松了
    出演:勝地涼 仲野太賀 新名基浩 岩松了 光石研
    主催・製作:(株)M&Oplays

    公式サイト
    http://mo-plays.com/inochishirazu/

    ●衛星劇場のご視聴はこちらから
    https://www.eigeki.com/page/howto

    ●衛星劇場カスタマーセンター 0570-001-444
    【受付時間】10:00~20:00(年中無休)
    (IP電話専用 03-6741-7535)

    ・・・

    Text ⇒ 三沢千晶