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    2021年1月20日 石丸幹二 ミュージカル『パレード』インタビュー    

     1913年、アメリカ南部のジョージア州・アトランタで実際に起こった冤罪事件を題材に、夫婦の愛を描いたミュージカル『パレード』が4年ぶりの再演となる。初演に引き続き、無実の罪で裁判にかけられるユダヤ人、レオ・フランクを演じる石丸幹二に話を伺った。また、ご自身の音楽活動への想いも興味深い。

    ■お稽古は第1幕から第2幕の折り返し点辺りだとお聞きしました(取材は12月後半)。稽古場の雰囲気はいかがですか?
    「森新太郎さんは効率的に稽古をなさる演出家で、メリハリがありとてもスムーズですね。明確な課題が見えますから、次までにきっちりとクリアしてくるような感じです」


    ■森新太郎さんといえば、4年前の初演時が、ミュージカル初演出だったそうですね。
    「そうなんですよ。その時に森さんがおっしゃっていたのが、“初めてのミュージカルなんだけど、歌が入っていてもストレートプレイと何ら変わりのない、ドラマをしっかりと立てた作り方でいきます”ということだったんです。で、今回3年半が経ち、森さんに大きな変化がありまして。森さんが歌うんですよ。“このフレーズはこうだよね”って。(3年半の間に)ミュージカルをたくさん経験してこられたのかな?と思いました」

    ■それは大きな変化ですね。
    「ミュージカル畑の人間たちにも“歌いながら、芝居はこういうふうにしたほうがいいよ”みたいな、より踏み込んだ指示が入ってきて。だから僕らも歌に逃げられなくなりました(笑)」


    ■(笑)。
    「森さんは新たなことにどんどんチャレンジしてきていますし、より深いミュージカルに仕上がると思いますよ」


    ■ご自身が演じられるレオ・フランクの人物像についてはどう捉えていますか?
    「人間って一言では表現できませんよね。今この段階で、彼についてパッと思いつく言葉を挙げるとすればーー型にはまった人。つまり、ユダヤ人であることの誇りを持って生きている人間、ということです」

    ■初演時からレオの見え方は変わってきましたか?
    「前回と同じ演技をしなくてもいいんじゃないか?という想いはあります。より多面的なレオ像を求めているので、さらに調べ、考えています。例えば、レオは北部出身ですが、いろいろ調べていくと、彼のルーツは南部にあったらしいんです。アトランタはまったくゼロの土地ではなかった。だから、人種差別が非常に厳しいし危険だとわかっていながらも、“なんとかなるかもしれない”という想いでやって来たのかもしれない。そうすると冒頭の、アトランタに来たことを後悔している歌も、また、お金を稼ぐために我慢する気持ちも、表現が若干違ってくるかもしれない。こんなふうに選択肢は日々広がっていて、まだどこに落とし込むかは決まっていませんが、どのカードを使おうかな?と考えながら稽古をしています」

    ■レオの妻、ルシール役の堀内敬子さんとも4年ぶりの夫婦コンビが復活します。
    「すごく柔軟な方で、今回も森さんのいろいろな要望を彼女なりにレシーブしていますよ(笑)。“あぁ、変わらないな~”と思いながら観ています。4年経って、さらに引き出しが増えた敬子ちゃんにビックリしていますし、彼女を初め、このカンパニーは刺激に溢れているんです。今作では40歳以上の方がたくさんいるんですよ。今回、今井清隆さん、福井貴一さんが新たに加わり、大人の持ち味が映えて、より彩豊かになりましたね。若手も充実していて、新加入の内藤大希さんといった若い子たちのパワフルな演技や歌を聴くと、“僕らもがんばらねば!”と思います(笑)」


    ■音楽もトニー賞の最優秀楽曲賞を受賞するなど、とても素敵な楽曲が揃っていますね。
    「ジェイソン・ロバート・ブラウンが創った楽曲は心に響くメロディが多いですよね。しかも、心情にちゃんとリンクしている。素直に日本語を乗せていくと、感情のうねりになるんです。だから、ニュアンスの出し方を工夫して、さらに細やかな想いが込められる。だからトニーを獲ったんだなと思いましたね。ただ、歌いこなすのは、相変わらず難しい。我々アジア人に刻まれているリズム感とは、全く違うリズム感ですし、特にアフリカン・アメリカンの人たちの醸し出すグルーヴなんて、そんなに簡単には表現できないですよね。でも、そこは稽古で見事にクリアして、見せ場の1つにまで持っていっています。劇場の帰りに口ずさんでもらえるような楽曲もありますし、楽しみにしていてほしいですね」

    ■石丸さんは普段、どのような音楽をお聴きになるんですか?
    「仕事がらみの音楽が多いですね。今年の秋はコンサートで歌っていたタンゴ。ヴォーカル入りのピアソラとかを聴いてたかな。でも今はなるべく『パレード』の曲を流して、その世界の中にいるようにしています……他の曲を聴いている場合じゃない、という感じですから(笑)」


    ■今年はデビュー30周年ということで、おめでとうございます。記念のアルバム『The Best』と『Duets』をリリースされましたね。
    「ありがとうございます。“30年”という節目に、ソロとデュエットで自分のこれまでを振り返ろうと思いました。それぞれのアルバムに新録を1曲ずつ入れ、私の「今」も表現しています。この2タイトルをリリースすることで、「これから先」を考える良い機会になりましたね。次の節に向かって、どんなスタイルを新たに創ろうかとか。嬉しいことに、NHKの『うたコン』に出演させていただくと“これを歌ってください”と曲の提示があり、昭和の歌に触れる機会がよくあるんですね。歌っているうちに、“僕らが子どもの頃に聴いていた歌を次の世代に歌い継いでいくことも使命かな?”と思ったりもして。そういった意味では、日本の古き良き歌もどんどん歌っていこうと思っています」



    【音楽テーマコラム:あなたにとってのハッピーソング】

    ミュージカル『パレード』より「まだ終わりじゃない」

     劇中、獄中のレオが妻の存在の大切さに気づき、“2人だったらこんなことができる”と歌います。前向きな歌で、歌いながら気分が高揚していきます。普段の生活の中でも、諦めかけていることにもう1回挑戦してみようと思えたり、背中を押してくれる歌ですね。


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    [プロフィール]

    ■石丸幹二(いしまるかんじ)
    ’65年生まれ。愛媛県出身。東京藝術大学在学中の’90年、劇団四季にてミュージカル『オペラ座の怪人』でデビュー。看板俳優として活動を続け、’07年退団。現在は、舞台、映像、音楽と多方面で活動し、テレビ朝日系「題名のない音楽会」の司会も務める。デビュー30周年を記念して、’20年10月11日 Bunkamura オーチャードホールにて無観客公演を配信した。ベスト盤『The Best』とデュエット盤『Duets』が発売中。

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    Photo ⇒ 大川晋児
    Text ⇒ 三沢千晶
    Hair&Make-up ⇒ 平山直樹
    Styling ⇒Shinichi Mikawa
    衣装協力⇒NEIL BARRETT(ニール バレット ギンザシックス)


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    【STAGE Information】


    ミュージカル『パレード』

    東京公演:2021年1月17日(金)~1月31日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
    大阪公演:2021年2月4日(木)~ 2月8日(月) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
    愛知公演:2021年2月13日(土)・2月14日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
    富山公演:2021年2月20日(土)・2月21日(日) オーバードホール



    作:アルフレッド・ウーリー 
    作詞・作曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン 
    共同構想およびブロードウェイ版演出:ハロルド・プリンス
    演出:森新太郎  
    翻訳:常田景子  
    訳詞:高橋亜子  
    振付:森山開次 
    音楽監督:前嶋康明 
    キャスト:石丸幹二、堀内敬子、武田真治、坂元健児、福井貴一、今井清隆、石川 禅、岡本健一/
    安崎 求、未来優希、内藤大希、宮川 浩、秋園美緒、飯野めぐみ、熊谷彩春/
    石井雅登、白石拓也、渡辺崇人、森山大輔、水野貴以、横岡沙季、吉田萌美
    公演に関するお問い合わせ:ホリプロチケットセンター TEL 03-3490-4949(平日10時~18時/土曜10時~13時/日祝休)
    主催・企画制作:ホリプロ




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