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    2021年9月18日 ムロツヨシ スペシャルインタビュー -前編-

     

     観る人を幸せにしてくれる役者、ムロツヨシ。“喜劇役者”としての顔では、思いきりコミカルに演じ切ったかと思いきや、作品によってはシリアスなお芝居で観る人の心をグッと掴み、涙を流させる――。そんなムロの初主演映画となった『マイ・ダディ』では、まさに後者のお芝居で観る人を感動させ、さらに彼の引き出しの多さを感じることができる。今作について、前後編に分けてのロングインタビューを公開する。

    ■一足先に映画『マイ・ダディ』を拝見させていただいたのですが、むちゃくちゃ泣きました。
    「あはは! ありがとうございます」

    ■この作品の話を最初に聞いたのはコロナ禍になる前ですよね。
    「そうですね。3年ほど前になります。“(村上公一プロデューサーから)興味があるか教えて欲しい”と言っていただいたんです。最初に脚本を読んで、とてつもなく純粋で真っ直ぐな物語だなと感じましたし、それでいて構成がしっかりとできているから、これを映像化したらとっても面白いんじゃないかと思って。それと同時に、僕は純粋に“この世界に入りたい”と思ったので、すぐにそう伝えさせてもらいました」

    ■「親バカ青春白書」(2020年ドラマ)に続いて、父親役も増えてきましたよね。
    「実は、この『マイ・ダディ』のほうが早くクランクインをするはずだったんです。ただ、コロナ禍で延期になり、「親バカ青春白書」のほうが先になったんですよね。とはいえ、そこではこの父親役とはまったく違う役でしたが(笑)」

    ■どちらも娘を大切に思う父親でしたが、また違うタイプですよね。
    「そうですね。今作で僕が演じた役、“一男”の好きなところは、人間臭いところなんです。愛が信じられなくなった時に、裏切られたかもしれない相手や状況を恨むのではなく、恨み始めてしまった自分を恨むんですよ。そのようにベクトルを自分に向けているところには、どこかで自分自身もそうしようとしているところがあるので、良いか悪いかは置いておいて、共感してしまったんです」

    ■なるほど。“一男”は、ご自身に近い考え方のキャラクターだったんですね。
    「はい。自分でも言語化できていない、触れていないところで共感したところがあったからこそ、この男になりたい、と思いました。ただ、難しいのは、本当に父親をやったことがないから、本当の意味での理解ができるかが心配だったんです。この『マイ・ダディ』では、“一男”と娘の“ひかり”は14年程一緒に住んでいるからこその、強い絆があるわけで。でも“ムロツヨシ”と、娘を演じた“中田乃愛さん”にその時間はないんです。とはいえ、父親ごっこ、親子ごっこにはなりたくなかったんですよ。なので、出来る限り、中田さんとはコミュニケーションを取って、“娘として愛そう”と思ったんです。そう思った矢先にコロナ禍となり、撮影が延期になってしまったので、メールでこまめに連絡を取るようにしていました。それもあって、距離を縮められたのは、すごく良かったですね」

    ■その連絡の取り合いって、普段の女優さんや俳優さんと連絡を取るのとはまた違う感覚ですよね。
    「まったく違いましたね。中田さんはその頃、学業に専念していたんです。なので、勉強の邪魔にならないくらいの、やり取りを続けていて。もしあの時期に、彼女が仕事もしていてもっと忙しくされていたら、“親子関係”というよりも、“仕事仲間”としての相談になってしまっていたと思うんです。でもそうではなく、“父より”“娘より”というメールで、お互いの関係が少し深くなったり、満たされたり、埋まったりするものがあったので、すごくいい時間でした」

    ■それを経てからの再会はいかがでしたか?
    「これが、本当の親子が再会したみたいで、照れくさくなったんですよ(笑)。“あの時連絡しすぎちゃったかな?”とか、本当に、お父さんが娘に遣うような“気遣い”みたいなものがあって。それもまた、新鮮な感覚でした」

    ■今作の中で、父娘の絆の深さを特に感じたシーンは、ポスターにも使われている、向かい合っているシーンでした。観ていて本当に涙が止まらなかったんですが、演じているお2人も、より感情移入をしたシーンだったのではないでしょうか。
    「あそこは、一男が強がって、“絶対に娘を助けるために何でもしよう!”と思った日に、まさかの娘に説き伏せられるシーンなんです。その時の感情って、脚本や、台詞を覚えて放つだけでは伝えるのは難しくて。もちろん、監督の演出や、客観的視点をいただいた上で作ることができたものだとは思うんですが、すごく難しかったですね。リハーサルもたくさんしましたが、そこにもあまり沿わないようにしないといけないし、たくさん考えたからこそ、演じるまでに時間がかかってしまって。当たり前のことですし、どのシーンもそうではあるんですが、ちゃんと感情が動かないといけないし。お互いがプレッシャーを持って、人間として、役に対して失礼にならないように、かなりの時間をかけました」

    ■お2人で丁寧に作り上げたシーンだったんですね。
    「そうですね。すんなりとはいかなかったけど、それが逆に正直なのかな、と思いましたね。本当に上手い演じ手の人ならできるかもしれないけど、僕と中田さんはそういうタイプではないですし…。でも、ここでそれを悔やんでいる時間は必要ないので、できないながらも、何をすればいいか? 自分達なりにどう埋めていくか?ということを必死に考えたシーンでした」

    ■言葉を選ばずに言えば、“泥臭さ”“人間らしさ”を感じたのは、そういった葛藤が表に出ていたからかもしれないですね。
    「確かに、出ていたのかもしれないですね」

    ■監督さんからは、どのような言葉をかけられましたか?
    「実は、すごく任せてくれたんです。芝居の質や、どれくらいコメディにならないようにするか、またはどれくらいコメディになってもいいか?など、いろいろな言葉を交わしながら決めていきました。カメラに撮って映像的にどう表わすかは、もちろんお任せしていますので、芝居はどう真っ直ぐに演じていくか? その真っ直ぐの捉え方、なども、足並みを揃えて演じていきました。やっぱり、“お任せします”と言われたことはすごく嬉しかったですし、その言葉の意味としては、“お芝居は任せますので、それ以外は任せてください”という意味も込められているんですよ。それもあって、父娘のシーンは、かなりそっとしておいてくれました。ただ、中田さんに対しては、ガンガン演技指導をしていて」

    ■なるほど。
    「でも、そうすることで娘のひかりが感情的になれば、対する父も動きますよね。なので、自然と僕の演技指導も入っていたんです。それに自分も、“彼女の変化を全部汲み取ってあげたい”という想いで演じていたので、ある意味、自分のために演じている時間がほとんどなかったんですよ。元々、そういう役、というのもあったんですけどね」

    ■今回、主人公の“一男”には、乗り越えなくちゃいけない高い壁が次々と訪れます。あの絶望を乗り越えていくのって、本当に大変だと思うんです。ムロさんは、もしご自身だったとしたら乗り越えられると思いますか?
    「簡単には乗り越えられないですよね。ショックを受けると思いますし…。それに、鍵となる奥さんの周囲の人達のことも、全く理解できないか?と言われたら、嘘になるんです。ただ、この物語に生きている人達って、すごく弱くて、すごく愛おしいんですよ。ぜひ、この映画を観た人達から、生の感想を聞きたいですね。積極的に感想を呟いてくれたら、嬉しいです」

    -後編に続きます!-

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    【プロフィール】


    ■ムロツヨシ

    1976年1月23日生まれ。神奈川県出身。1999年、作・演出・出演を行なったひとり舞台で活動を開始。最近の出演作は、舞台「muro式.がくげいかい」、ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」など。今後は、映画『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』(2021年12月17日公開)などが控えている。

    公式HP:www.murotsuyoshi.net/


    Photo ⇒ 後藤倫人(D-CORD)
    Text ⇒ 吉田可奈
    Hair&Make-up ⇒ 池田真希
    Styling ⇒ 森川雅代(FACTORY1994)
    Costume ⇒ ジャケット ¥52,800、シャツ ¥35,200、パンツ ¥35,200/以上3点 ヨーク(エンケル TEL:03-6812-9897)

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    【MOVIE Information】

    ©2021「マイ・ダディ」製作委員会

    映画『マイ・ダディ』

    9月23日(木・祝) 全国ロードショー 

    監督:金井純一
    脚本:及川真実 金井純一
    音楽:岡出莉菜
    出演:ムロツヨシ
    奈緒 毎熊克哉 中田乃愛
    臼田あさ美 徳井健太(平成ノブシコブシ) 永野宗典 光石研
    主題歌:「それは愛なんだぜ!」カーリングシトーンズ(ドリーミュージック)
    製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
    制作プロダクション:ROBOT
    配給:イオンエンターテイメント
    ©2021「マイ・ダディ」製作委員会


    公式HP:mydaddy-movie.jp/
    公式Twitter:@mydaddy_movie
    #映画マイダディ
    公式Instagram:@mydaddy_movie




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