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    2023年3月17日 井上芳雄 アルバム『Greenville』インタビュー

     井上芳雄のアルバムと聞いて、ミュージカル作品、もしくはディズニーかな? なんて安直に考えた自分が恥ずかしい。ニュー・アルバム『Greenville』は、賛美歌のような荘厳さを醸し出したかと思えば、軽やかにポップミュージックを歌いこなし、ロックで、ダンサブルで、古き良きミュージカル映画?! 初めて出会う井上芳雄の歌声と表情、曲ごとにコロコロ変わる表現に、ただただ驚かされっぱなしなのだ。


    「自分でも驚いてます(笑)。これまでもミュージカルに限らず、いろんな曲を歌わせてもらってきたんですが、どちらかと言えばカバー歌手というか、ある曲を歌うことがほとんどだったので。まぁラジオ番組の企画で作った経験はあるものの、自分が初めて歌うオリジナル曲でアルバムを作るなんていう考えはあんまりなくて。結構チャレンジでしたね」

    ■となると、今回の話はどういうところから生まれてきたのでしょう?

    「もともとミューシカルをやりたくて歌っているので、ミュージカルで歌えていれば幸せだっていうのは変わらないんです。ただ歌番組に出たり、最近は司会もやらせてもらう中で、自分の曲がある強さ、ですよね。特に演歌の方が渾身のシングルを全国で歌って売り歩く、1年掛けて聴いてもらう姿を見ていると、歌手とはそういう、“これが自分の歌なんだ”と提示していく仕事でもあるんだな、いいなぁって思っていて。そんな中で新しいアルバムを作りましょうという話になり、ミュージカルとはベクトルの違うもので作れたりするのかな? みたいな案が生まれてきたんです。より日常に馴染む音楽を歌ってみるのはどうだろうって。プライベートの僕は、大貫妙子さんとか、やさしい女性ヴォーカルの曲が好きで、よく聴いているから」

    ■今作のプロデュースをコトリンゴさんにお願いした理由もわかった気がしました。

    「コトリンゴさんはご自身も素晴らしいシンガーで。気負いのない、すごく柔らかい歌い方をされているので、こんなふうに歌ってみたいな。コトリンゴさんと一緒にやったら、そういうディレクションをしてもらえるのかなって期待していたんですけど、制作期間中はずっと、“いやいやいや、井上さんのままで”みたいな感じでしたね(笑)」

    ■はい。清塚信也、モノンクル、堂島孝平、劇作家・蓬莱竜太他、バラエティに富んだ作家陣による、バラエティに富んだ曲を、バラエティに富みすぎるヴォーカルが響かせまくってました。

    「ハハハハ。別に歌い分けをしたわけではないから、曲ごとに違う役をやっている感覚に近いのかなぁ。ただミュージカルの歌はセリフなので、ビートの中をゆらりゆらりしながら自由に歌うものはほぼほぼなくて。そういう意味では、どの曲のレコーディングも新鮮でしたね。あとは作家陣も何もないと大変でしょうから、僕からテーマだけ提示させてもらって。人生の局面に関するワードを10個くらい出して、その中から選んで作っていただいたんです」


    ■生を受ける、比べられる、使われる、試される、晒される、追い越される、拒否される、奪われる、抉られる、召される。並べるとかなり圧が強めな10個のテーマについてもお聞きしたいです。

    「ジャンルに関係なく、音楽はもう1人の自分と言いますか。背中を押したり、励ましてくれたり、奮い立たせたり、生きていくのに役に立つものだと僕は思っているので。せっかくオリジナルを歌うのであれば、聴いてくれた人の支えになる曲にしたくて。テーマ自体はネガティブな響きですけど、そのまま書いて欲しいというよりは、それに対する対処法ですよね。実際、真逆のアプローチだったり、一見そのテーマだとはわからない表現がどんどん出できてきて。みなさん、さすがアーティストだなぁと思いましたね」

    ■祈りにも似た「Prelude」から始まり、様々な苦難とサウンドを経て、クラシックな空気を纏う「あなたに贈る海風」へ辿り着く。そして1曲目に戻ると、輪廻転生ではないですが、永遠にループしていく感じがします。

    「嬉しい。意識したわけじゃないけれども、良くも悪くも僕というフィルターを通してのパフォーマンスになるから、何かしらの統一感みたいなものは生まれていて、最終的に物語性を帯びたのは興味深いなぁと思ましたし。何より、どんなジャンルでも歌うと楽しいんだなって。得意不得意も含めて難しさはそれぞれ違いますけど、好き嫌いで言えば同じで。今回はないラップもやってみたら面白いのかもしれないっていうくらい、自分はいろんな曲を歌ってみたいんだと気付きました」

    ■具体的に苦労された曲を挙げるなら?

    「“Lost In The Night”ですね。英語の曲は歌ってきましたけど、初めての英詞をあの速さで、あの広い声域のレンジで、独特のビートで、しかもカバーする時にはほとんど選ばないジャンルだから。正直、最初のレコーディングの時は歌いこなせてないな、借りてきた猫感があるよなぁって思っていて。時間をおいてもう一回トライさせてもらって、いつもとは全然違う、声を張らないヴォーカルに辿り着いたんです。まぁミュージカルの曲のアルバムを出せばね、喜んでもらえる見通しがある程度つくわけですけど、僕も40代になったし、そういうものばっかりでは違う気がして。終わりがくることは、少なくとも20代の頃より切実に感じているし。コロナウィルスによってみなさんも、いつどうなるかわからないぞって痛感されたと思うんです。僕自身、男性の平均寿命から言ったらまだ半分か、なんて漠然と信じていたけど、そこにはなんの保証もないし、平均というだけで」

    ■それを目の当たりにしましたよね。

    「本当に。だから急がなきゃってことでもないんだけど、それを前提に生きていくべきじゃないかなって。有限ということの辛さと尊さを日々感じるようになったからこそ、まったく未知な、もしかしたらものすごい嫌われちゃうかもしれないことも、自分が興味あって、面白いと思うなら、やったほうがいいなぁと考えているんです。うん、まさにそういうアルバムですよね」


    Text 山本祥子

    B-PASS ALL AREA Vol.15 (3月31日発売)では、
    ロングインタビューを掲載!!
    こちらも要チェックです♪
    ▶︎ https://www.shinko-music.co.jp/item/pid1653513/


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    共通テーマ音楽コラム「あなたにとってのラブソング」


    エルトン・ジョン/「Can You Feel the Love Tonight」ライオンキング

     ミュージカルをやっている僕にとっては、やっぱり面と向かって、相手の目を見ながら歌うデュエットソングかもしれないですね。とても照れるものではあるんですよ。日常生活で愛を歌いあげることってないから、稽古で最初にやる時はすっごく照れちゃうんだけど(笑)。でもそれがミュージカルのデュエットだし、本番では目の前の君しか見えなくなるんです、ほんとに。

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    【プロフィール】


    井上芳雄
    いのうえよしお。1979年7月6日生まれ。福岡県出身。日本を代表するミュージカル俳優の1人。今後は、ミュージカル「ジェーン・エア」(2023年3月11日~4月2日 東京芸術劇場 プレイハウス、4月7日~13日 大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ)、「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」(2023年6月29日~8月31日 帝国劇場)、ミュージカル「ラグタイム」(2023年9月日生劇場)などが控えている。

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    【CD INFORMATION】


    初回盤
    通常盤

    ニュー・アルバム『Greenville』
    2023.3.22 Release


    初回限定版 CD+写真集+ポスター 6,600円(税込)
    通常版 CD 3,300円(税込)

    [CD]
    1. Prelude
    (Lyrics:Hina Music:Mona Arrangements:コトリンゴ Chorus arrangements:Kitri)
    2. The Only
    (Lyrics:Hina Music:Mona Arrangements:コトリンゴ)
    3. タイムテーブル
    (Lyrics & Music:コトリンゴ Arrangements & Produce:冨田恵一)
    4. 天使も悪魔も
    (Lyrics, Music & Arrangements:吉田沙良、角田隆太)
    5. Lost In The Night
    (Lyrics:Michael Kaneko Music & Arrangements:mabanua)
    6. Diary
    (Lyrics, Music & Arrangements:堂島孝平 Additional arrangements:コトリンゴ)
    7. ライフ
    (Lyrics, Music & Arrangements:コトリンゴ)
    8. 無題の詩
    (Lyrics:蓬莱竜太 Music:阿部海太郎 Arrangements:コトリンゴ)
    9. 記憶の庭 (Lyrics & Music:おおはた雄一 Arrangements:おおはた雄一、コトリンゴ)
    10. あなたに贈る海風 (Lyrics:寺尾紗穂 Music:清塚信也 Arrangements:コトリンゴ)


    日本コロムビア特設サイト
    https://columbia.jp/inoueyoshio/




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