父と娘の“愛”の物語、映画『マイ・ダディ』で初主演を果たしたムロツヨシ。ロングインタビューの後編では、映画のことはもちろん、共演した“仲間”のこと、 “お芝居”についてを中心に、語ってもらった。
■本作には、ムロさんと長きに渡るお付き合いの仲間達がたくさん出演されていますよね。
「そうですね。なかでも古くから僕を知っている、“永野宗典”も出演しているんですが、お芝居をしている時に、“生き様が出ているね”って言ってくれたんですよ。彼がそう言ってくれたことで、僕が“この映画の世界で生きよう”と思ったことが、ちゃんとできていたことが分かったんです。もちろん、僕の内面や、過去を知っているからこその言葉だと思いますし、お客さんはそう思わなくて全然いいんですけどね」
■それでも、嬉しい言葉ですよね。
「はい。そういうふうに伝わってくれたことは、すごく嬉しかったですね。それに、こうやって取材をさせていただくたびに、みなさんが泣いたと言ってくれてすごく嬉しいんです。“泣かされた”のではなく、“泣いた”という言葉はすごくいいなと思っていて。“泣いちゃったよ”と言われるのもいいですよね(笑)」
■永野さんと、こういう形で共演できたのも、すごく素敵なことですよね。
「そうですね。普段、映画に出る側の人間がキャスティングのことに口を挟んではいけないとも思うんですが、今回はプロデューサー陣のみなさんが意見を聞いてくださったんです。そこで、永野と本多力の名前を出させてもらいました」
■『muro式.』仲間でもありますね。
「はい。本多はスケジュール的に難しかったんですが、“戦友”として名前を挙げさせてもらいました。作品に想い出を入れちゃいけないのは分かっていますが、“初主演”は人生一度きりだからこそ、仲間が居ることでお互いの刺激や安心感にもなるということもあり、そう伝えさせてもらったんです。“ムロツヨシ”をずっと見てくださっている方達には歴史も感じてもらえると思いますし、“もし居てくれるのなら”という想いだったので、実現して感無量でしたね」
■この数年、ドラマや映画、舞台などで様々な役柄を演じる機会が増えたと思うのですが、その中でより楽しくなってきたことはどんなことでしょうか。
「“楽しくなってきた”ということで言うべきではないかもしれないのですが、僕らは“人前で楽しむことでみんなに覚えてもらわなくちゃいけない”と今でも思っていますし、それが自分に課していることでもあるんです。なので、もちろん楽しい場所も必要ですが、やはり、“ツラいな、苦しいな”ということも必要だということを、この映画を通じて学びましたね」
■試練が多い役でしたからね。
「そうですね。“娘が病気になった”――それを“一男”としてどう表現しようか?というレベルの話ではなかったんですよ。今回僕が決めたのは、そういった表面的なことではなく、“一男にならなくちゃいけなかった”んです。向き合い、この男として生きるのは、やっぱり苦しかったですね」
■なるほど。
「これまでの、“ムロツヨシ”の成功体験や失敗体験をすべて0にして、真っ白な1人の人間として、そして今役者を続けられている男が“一男”を演じる、というところだけが必要で。あとは、今言った成功失敗経験関係なく、思った通りにやることが大事で、過去のデータや自分で積み重ねてきた記憶を一度消すくらいの気持ちで演じていました。なので今は、楽しむことよりも、楽しむためにもここで苦しむ、ツラい想いをする、ということが自分の糧にもなりますし、この映画を観ていただくことが、さらにまた自分を楽しい場所に向かわせる1つの経験になるのかなと思えたんです」
■すごくいい経験になったんですね。
「そうでしたね。ツラいから、苦しいから逃げる、という場所ではなかったですね」
■この作品を経験して、“一男”をしっかりと背負ったからこそ、次のステップに行けた実感があるのではないでしょうか。
「すごくありますね。ステップアップというよりは、1つの物語の世界で、役、“男”と向き合った結果を感じています」
■ちなみに、今夏のドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」では、“一男”とは正反対の、パブリックイメージのムロツヨシさんが本領発揮されていましたよね。
「あれは過去のデータを呼び起こして、良いところを引き出している感覚ですね。昔失敗したことなど、わざと引き出しています(笑)」
■そうだったんですね(笑)。それにしても、「大恋愛~僕を忘れる君と」(2018年ドラマ)の時もそうでしたが、シリアスなものになると、すごく悲しみを背負う役が多いですよね。
「あはは。確かにそうですね。作り手や書き手の方が、ムロにある悲しみを感じ取って、そうさせたいんでしょうね」
■それはある意味、ご自身の深みや、新たな可能性が加わるからこその武器になりますよね。
「そう。いろんな面があって良いと思っていますしね。それに、最近は自分に求められている役柄に変化が出てきたんです。それこそ、“ハコヅメ”のように、みなさんが知っているようなムロもありつつ、「病室で念仏を唱えないでください」(2020年ドラマ)などでのヒールで天才外科医の役など、“よく俺に来たな!”と思うこともありましたが、どれもすごくありがたいですよね。あとは、“大恋愛”からシリアスな役がスタートしたんですが、“コメディ”じゃない、人間的な部分、パーソナルな部分を求めていただけるのは嬉しいことなんです。例えば自分が“振り子”だとして、左右もありますが上下などいろんな角度に振ることで、“右”に見せて“左”を演じて、次は“上”にと、本当にいろんな角度で演じて、見せていきたいんです」
■本作は、まさにそのうちの1つとして、すごくいい作品になりますね。
「はい。このツラい部分を見せていくことで、役者であるところの証明を、みなさんに1つずつしていこうかなと思っています。逆に言うと、この映画で、“本当はどれなの!?”と、僕に対する“謎”が増えてくれたら嬉しいですね。すべてが“本当”かもしれないし、全部が“嘘”かもしれない。“本当のムロツヨシって、何だろう?”って、みなさんの中でどんどん謎になってもらいたいですね」
■謎めいた男…!
「そう言うと、カッコつけすぎなので(笑)。“?”マークが出てきて、“少し混乱する~”くらいになったら面白いですし、僕にとっては、”やっぱり観ちゃうな”という感想が一番好きなんです。その言葉って、一番興味がある状態じゃないと、出てこないですからね。そうなるためには、パーソナルな部分も含めていろんな面をみなさんに見せていきたいですね」
■ありがとうございました。では最後にメッセージをお願いします。
「このご時世、と言ったら大げさですが、どんな時代にも必要な、“家族”や誰かを想う気持ち、そしてコメディとはまた違う“ムロツヨシ”を知っていただきたくて、この作品を作りました。劇場で、この世界の人達をどうか愛してください。お願いします!」
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【共通テーマ音楽コラム「月の綺麗な夜に聴きたい1曲」】
ドビュッシー「月の光」
最近、クラシックをよく聴くんです。この「月の光」は舞台(muro式.)でも使いましたが、すごく素敵なんですよ。ただ、舞台ではロマンチックなシーンではなく、ふざけたシーンで使いました(笑)。
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【プロフィール】
■ムロツヨシ
1976年1月23日生まれ。神奈川県出身。1999年、作・演出・出演を行なったひとり舞台で活動を開始。最近の出演作は、舞台「muro式.がくげいかい」、ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」など。今後は、映画『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』(2021年12月17日公開)などが控えている。
公式HP:http://www.murotsuyoshi.net/
Photo ⇒ 後藤倫人(D-CORD)
Text ⇒ 吉田可奈
Hair&Make-up ⇒ 池田真希
Styling ⇒ 森川雅代(FACTORY1994)
Costume ⇒ ジャケット ¥52,800、シャツ ¥35,200、パンツ ¥35,200/以上3点 ヨーク(エンケル TEL:03-6812-9897)
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【MOVIE Information】
映画『マイ・ダディ』
9月23日(木・祝) 全国ロードショー
監督:金井純一
脚本:及川真実 金井純一
音楽:岡出莉菜
出演:ムロツヨシ
奈緒 毎熊克哉 中田乃愛
臼田あさ美 徳井健太(平成ノブシコブシ) 永野宗典 光石研
主題歌:「それは愛なんだぜ!」カーリングシトーンズ(ドリーミュージック)
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション:ROBOT
配給:イオンエンターテイメント
©2021「マイ・ダディ」製作委員会
公式HP:mydaddy-movie.jp/
公式Twitter:@mydaddy_movie
#映画マイダディ
公式Instagram:@mydaddy_movie
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