山時聡真 舞台『オーファンズ』インタビュー

東京芸術劇場 シアターイーストにて、6月28日より上演される舞台『オーファンズ』。アメリカの劇作家 ライル・ケスラーの傑作とされる本作で、トリート役を演じる山時聡真さんにインタビュー。物語の印象や役作り、ハロルド役の村井良大さんやフィリップ役の本島純政さんとの交流エピソードなどをお話しいただきました。
■お稽古の感触はいかがですか?
「稽古が始まって2週目くらいですが(取材時)、必死です(笑)。セリフ量の多さにも困惑していますし、アクションシーンもあるので毎日身体を動かしたり小道具を使ったりして大変ですが、1日1日を楽しみながらやっています。先日やっと感覚が掴めてきたなという印象があって。というのも少し余裕が出てきて、お芝居でいろいろと遊べるようになったというか、いろんなことに挑戦できるようになりました。セリフが身体に入ってきてポロポロと出るようになったからかな?と思っています」
■『オーファンズ』は3人の孤児たちの物語です。山時さんは脚本を読まれて、どんな印象を持ちましたか?
「最初に読ませていただいた時に、すごく不思議な兄弟だなと思いました。そこにハロルドが入ってきたことで兄弟の距離感とか空気感が変わっていくのですが、僕が演じる兄のトリートは弟のフィリップを愛していたつもりだったけど、それは愛じゃなかったと気づくんです。昔から自分が当たり前に愛だと思って悪気なくやっていたことってあると思います。それが否定される瞬間に、子供なりの成長があると思っていて。僕も昔、美男美女を“びだんびじょ”だと思い込んでいました(笑)そうじゃなかったことを知った時の衝撃というのがあって。それと同じで当たり前だと思っていたことが覆る瞬間の衝撃が、トリートにもあったんだろうなと感じました。そういう変化がハロルドにもフィリップにもあって、3人とも不器用ながらも愛を持っているところにグッときましたし、自分の家族のことを思い返しました」

■トリートは乱暴者だし、言葉遣いも荒々しいですよね。山時さんとしてはご自身の中にはなかった人格を演じることになりますけど。
「(笑)そうですね。でも普段言わないからセリフが言いにくいなということはなくて、逆に普段と違うからこそ振り切って言うことができるという感覚はあります。ただ、叫ぶシーンや、ずっと怒っているけどいきなりやさしくなったりするところもあるので、その辺の声のトーンの落差はすごくむずかしいなと感じています。トリートは本当にやさしいのかな?って思うところもあるし、飴と鞭ではないけど、人間味のあるギャップをどう出していこう?と考えています」
■自分の中にも痛みを抱えるトリートにどうやって同化していったんですか?
「やっぱり稽古を通じてですね。1、2場ではフィリップとの兄弟の関係が表現されているのですが、そこからだんだんフィリップが離れていくのがわかるんです。僕に近づいたり離れたり、怯える瞬間とか言葉遣いがいきなり変わったりとか。稽古の中でも(本島)純政くんと離れていっている気がして、それがさみしかったです。その想いがすごくリンクしているのではないかなと思います」

■なるほど…。
「純政くんは僕の1学年上ですがほとんど同い年なので、稽古が終わって一緒に帰ったり休憩時間は話をしたりしていて。気を遣わずにすごく楽に話せる友達みたいな存在になってきました。そんな彼がちょっとでも遠ざかると、自分でもちょっとさみしい気持ちになったりしています」
■トリートとしてはフィリップを守ってあげているという意識ですけども、フィリップがいるからこそ自分も安心できているというところもありますからね。その感情の揺れが見どころの1つとなりそうですね。
「とあるシーンでフィリップとハロルドが喋っていて、トリートだけ喋っていないという場面があるんです。トリートは舞台上ではけっこう喋っているのですが、その時だけ舞台上で2人が喋っているのを聴いていて。そこが、今までガツガツと前に出ていたトリートが自分から遠ざかるというか、嫉妬している感じがあって。自分がそこに参加できていないのもさみしいんです。その変化は僕自身の身に沁みて感じる瞬間があったので、その感覚を生かしています。今はまだ稽古中でトリートを客観視して演じている時もあるので、“役になって”ってよく言うのですが、自分が今どういうお芝居をしているのか? トリートは今どういうことを思っているのか?ということを考えながらやっています。いろいろと試せることが稽古期間の魅力なんです」

■演出の荒井遼さんとはどんなお話をされましたか?
「最初によく言われていたのが、“会話をしろ”ということでした。台本を覚えて稽古場に持ってきたものをただ言うだけになっていたので、ちゃんと目の前の人と会話をして話を聞けば、どこでセリフを言いたくなるか?とか、どこで話を遮ったりするのか?という感覚が見えてくるから、まずは普通に会話してみてと言われました。それで稽古前にエクササイズをやったんです。わけのわからない言葉で何かを相手に伝えるというものです。BARABABABA~とか何でもいいのですが、言葉として成り立っていない言葉を発して何かを伝える、何かを読み取る。その力をとにかく今は向上させています」
■おもしろいエクササイズですね。
「何かを伝えたいからこそ表情だったり行動が生まれるんです。行動から言葉が生まれる場合もあるし。理屈というか道理を持ってお芝居をしないといけないということを今回あらためて感じました」

■それで、先ほどおっしゃっていたアクションシーンですけども、どんな感じになるんですか?
「現時点ではまだ決め切っていないのですが、人に殴りかかったり、ナイフを持って斬りにいこうとしたり、フィリップを押し倒して首を絞めるシーンとか、僕としては初めてのことばかりなんですよ。今後の稽古の中でアクション指導の方が来てくださるのですが、もともとすごくやりたかったことなので楽しみです」
■フィリップ役の本島純政さんは年も近いし、話も合うのではないですか?
「そうですね。よく美容の話はしていて、僕たちの共通点は美容好きというところです。おもしろいなと思ったのが、出会ってすぐの頃って意識的に何か話しかけようとするじゃないですか。でも僕たちってそういうのがなくて。普通に喋って、帰る時も普通にバイバイ!みたいな?」

■無理に話そうとすることなく自然なんですね。
「そう、お互いに自然体でいられる感じ? 家族ってそうじゃないですか。意識していないけど、いないのはイヤみたいな。純政くんともそんな感じで、本当に兄弟っぽいんです。そういえば僕は姉とどんな感じだろう?と思い返すと、今朝も会いましたけど“おはよう”以外喋ってないんですよね」
■(笑)本島さんともそういう空気感なんですね。
「その関係性が上手いことフィリップとトリートの関係に繋がれば、もっといい関係性が生まれるのではないかな?って思っています」

■本島さんはどんな方なんですか?
「おもしろい方です。最初は不思議で大人しい方だと思っていたのですが、かなりエンターテイナーでした。性格診断をやったら、2人ともまったく同じ“エンターテイナー”だったんです。わかりやすく言うと陽キャみたいな(笑)。テンションを上げて元気に仕事と向き合える方だなって思いました。立ち稽古に入った時に、セリフが全部入っていて、当時の僕はまだ全然入っていなかったので、すごく刺激をもらいました」
■一方、ハロルド役の村井良大さんの印象はいかがですか?
「お会いした瞬間からすごく優しい方で、穏やかで包容力があります。ハロルドの印象もあるので、いろんなことを教えてくれるお兄ちゃんという印象があります。純政くんと僕は舞台経験があまりないのですが、村井さんはベテランの方なので、たとえば“ここのセリフ言いにくくない?”とか自分以外のところも考えて提案してくださるんです。話をする時も腰を低くして同じ目線になって話してくださったり、とにかくフラットで平等に接してくださる方です。毎回お芝居の面でもビックリさせられます。そういう表現があったか!とか、そういうお芝居をされるんだ…とか。さすがだな~と思うと同時に、僕も負けないくらいがんばろうって気持ちにさせていただいています」

■刺激をたくさんもらっているようですね。
「実は今日稽古が終わったら、村井さんと純政くんと3人でご飯に行くんです。それも村井さんが誘ってくださって、うれしかったですし、すごく楽しみです」
■山時さんは舞台作品が2作目となりますが、現在感じているお芝居のおもしろさとは?
「現時点では本当に必死に食らいついているところで、まだ“ここが楽しい”って思えるところが正直ありません。たぶん稽古を経て本番を迎えて、おもしろさを感じることが出てくるんだろうなって感じています。1つ思うのは、お客様に生で伝えられるというところは、AIにはできないなって(笑)。『オーファンズ』の舞台は時代が違いますし、場所もフィラデルフィアという場所で。僕たちは日本語で演じますが、絶対に説得力のある舞台になると思うし、それを直で届けられるというのは舞台にしかない魅力だと思います」

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■音楽コラム「My Relax Song」■
嵐「果てない空」
毎日電車の中で聴いています。この曲を聴いている時は携帯電話を触ったり動画とかも観ないで、音楽だけに集中する時間になっているんです。僕の姉が嵐さん大好きでライヴ映像とかいつも家で観てたんですよ。櫻井翔さんとはCMで、二宮和也さんとは映画で共演させていただいて、姉は大絶叫していました(笑)。
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■プロフィール■
山時聡真
さんときそうま。2005年6月6日生まれ。東京都出身。近年の出演作は、ドラマ「ちはやふる-めぐり-」(2025年)「時すでにおスシ!?」(2026年)、映画『アンダーニンジャ』(2025年)『蔵のある街』(2025年)『90メートル』(2026年)など。今後は、映画『ブルーロック』(8月7日公開)などが控えている。
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■クレジット■
Photo 小嶋文子
Text 三沢千晶
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■STAGE INFORMATION■

『オーファンズ』
2026年6月28日(日)~7月5日(日)
東京・東京芸術劇場 シアターイースト
作:ライル・ケスラー
翻訳:小田島恒志
演出:荒井遼
出演:山時聡真 本島純政 / 村井良大
©︎ 2026 『オーファンズ』
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