市川染五郎×駒木根葵汰  特別先行版『鬼平犯科帳 本所の銕(てつ)/密告』スペシャル対談

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 池波正太郎著作の累計発行部数3,000万部を超える大ベストセラー時代小説を原作に、松本幸四郎主演でこれまで7作の映像化が行われた『鬼平犯科帳』シリーズ。最新作となる第8弾『本所の銕』(市川染五郎主演)、第9弾『密告』(松本幸四郎主演)が、特別先行版『鬼平犯科帳 本所の銕(てつ)/密告』として全国公開されている。『本所の銕』は、原作「密告」で描かれた若き日の平蔵こと長谷川銕三郎時代のエピソードに着想を得たオリジナルストーリーで『密告』へとつながる物語となり、市川染五郎が銕三郎役を務める。一方、駒木根葵汰は『本所の銕』『密告』の両作品で、物語のカギとなる人物、悪御家人・横山小平次と盗賊・伏屋の紋蔵の一人二役を演じる。今作で初共演となった二人に、撮影の裏話や、時代劇への想いなどを聞いた。

市川染五郎

■お二人は『本所の銕』で共演されましたが、それぞれに演じた役柄をどのように捉えていましたか。

市川染五郎(以下、染五郎)「(主人公・長谷川平蔵が)放蕩無頼な日々を過ごしている時代ではあるのですが、心の深い部分では情に熱く、ただの悪(わる)ではないというイメージがあります。そこからのちに“鬼の平蔵”と呼ばれる人物へと繋がっていくので、その過程をグラデーションで見せていくことを今回は特に意識していました。前回『本所・桜屋敷』『血闘』に出演させていただいた時は、“とにかく銕三郎という人物を演じ切る”ということを目標にしていたのですが、今回は時系列的にも前回より平蔵の時代に近づいていて、演じる自分自身も年を重ねていますので、より平蔵につながる銕三郎として見ていただけるように作りました。ですので、前回はあまり意識していなかったのですが、今回は意識して父(長谷川平蔵役/松本幸四郎)の真似をすることもありました」

駒木根葵汰(以下、駒木根)「“どの時代にもこんな人間はいるのだな”とは、自分で演じていても感じました。逆にあそこまで非道に振り切れる人間も珍しいと思うので、銕三郎に気持ち良く成敗されたいと思っていました。僕が嫌なことをすればするだけ、染五郎さんの心の中にも“こいつ、嫌だな”という気持ちが生まれたらいいなという……。そういう自分もいるし、そう思ってほしくないという自分もいて、葛藤がありました(笑)」

染五郎「“こいつ本当に嫌なやつだな”と思っていました(笑)。現場ではあまりお話する時間がなくて、駒木根さんご自身がどういう方なのかを知ることができなかったので、本当に駒木根さんはああいう人なのではないかと」

駒木根「いやいやいや(笑)」

染五郎「実際はとても柔らかい方で安心しました(笑)」

■銕三郎は前回出演した際は殺陣のシーンで木の棒を使用していましたが、今回は刀を使っていますね。

染五郎「殺陣は前回よりも激しく、シーンも多かったので大変でした。今回は峰打ち(背中側の刃のない部分を使って相手を打つ)というやり方で、斬るでも、殴るでもなく、打つという感覚なのですが、見せ方が難しかったです」

■見せ場となる立ち回りのシーンはいかがでしたか。

染五郎「自分たちよりも強い相手と戦っていることを常に意識していました。力の入り方が相手によって変わってくると思うので、同じ殺陣のシーンでも、その時の心情を刀に乗せていました」

駒木根「小平次はただ見ているだけだったので、現場で皆さんが一生懸命立ち回りされているのを見て、かっこいいなというか、いい汗をかいている感じがして、少し羨ましいとも思っていました」

■平蔵役の父・松本幸四郎さんとのお話も伺いたいのですが、幸四郎さんは『本所の銕』をご覧になって、染五郎さんに対して「大きな成長に涙がこぼれた」とコメントされていましたね。

染五郎 「本当かな(笑)。同じ人物を演じるので、必然的に共演は叶わないのですが、文字通り、一心同体となって演じている感覚はありました。平蔵の姿をしている父と、銕三郎の扮装をしている自分とが意図せず会う日があり、“未来の自分だ”というような不思議な感覚でした」

駒木根葵汰

■駒木根さんは染五郎さん、幸四郎さんのお二人と共演されましたが、どのように感じましたか。

駒木根「同じ人物を違う人が演じるというのを目の前で体感させていただけたことはとてもぜいたくな時間だったと思いました。お二人が父子だからこそのオーラといますか、ビシビシと伝わるものがあり、不思議な説得力を感じました」

■幸四郎さんが駒木根さんに対して「血のにじむ生き様に引き込まれた」とコメントされていたことについてはどのように思いましたか。

駒木根「非常に嬉しいお言葉をいただけたと思います。僕は今回の役柄を難しいけど面白そうだと感じて、自分なりに一生懸命向き合ったので、そのような言葉をいただけて感無量です。ご一緒する前は勝手に“厳しい方なのかな?”と思っていたのですが、現場ではおどけていらっしゃることもあり、とても演じやすい環境を作っていただきました。ただ、スタートがかかるとスイッチが入って、同じ人とは思えないぐらいでした。それに対して染五郎さんは本当にひたむきに、ずっとご自身の役に向き合っているイメージがありました」

染五郎「そうですかね?」

駒木根「紋蔵が平蔵に刀を寸止めされて気絶するシーンと、小平次に向かって銕三郎が小判を手で払うシーンという、『密告』と『本所の銕』で似たようなシチュエーションがあったのですが、幸四郎さんはリハの間僕のおでこに刀を当てて遊んでいて、染五郎さんは“これ、大丈夫かな?”と真面目に確認をされていて、お二人が全然違っていて面白かったです(笑)」

■染五郎さんは『密告』を観て、どのような感想を持ちましたか。

染五郎「『本所の銕』の最後が、こうやって『密告』へ繋がっていくのだと思うと、ゾクゾクする展開でした。『鬼平犯科帳』という作品の魅力の一つとして、平蔵が銕三郎だった時代に出会った人たちとの縁が平蔵時代になって戻ってくるというストーリーがあると思っていて。今回の『本所の銕』はほぼオリジナルストーリーにはなりますが、『鬼平犯科帳』らしさをとても感じられる作品になりましたし、『密告』も含めて、銕三郎時代にフォーカスすることで、深いところまで見えてくる部分があると感じました。これまでの『鬼平犯科帳』ではあまり銕三郎時代が描かれることがなかったので、そういう意味で、新しい『鬼平犯科帳』が生まれた感覚がありました」

■お二人から見た時代劇の魅力を教えてください。

染五郎「これは父が言っていたことなのですが、現代を生きている人の中で、江戸時代とか、時代劇で描かれる時代をリアルタイムで知っている人はいないわけで…。史実に忠実に描くことも大事ですが、いちから時代を作ることもできるので、ファンタジーとしても観られるものだと思います。現代劇と同様に“ドラマを観る”という見方もできますし、殺陣のシーンなどは、エンターテインメントとして観ることもできる。そうした新しい時代劇を体現しているのが、この『鬼平犯科帳』だと思うのです。そのような作品に加われたことは嬉しいですし、私たちと同年代の方にも観ていただいて、“こんなに新しいものなんだ!”と思っていただけたらいいなと思います」

駒木根「僕は時代劇の中で描かれる当時の方の熱さや必死さに惹かれます。人を斬らなければ明日を生きられないとか、今よりも生きることが大変な時代で、その瀬戸際で自分が何の選択をするのかが問われていて。そうした部分を現代と比べながら、演じています。だから、僕と同世代の方々も、時代劇を通して、今の自分の悩みが少し和らいだり、消化させたりすることもできるのではないのかなと思っています。この『鬼平犯科帳』はとても観やすい時代劇だと思うので、ぜひ壁を作らずに観ていただけたら嬉しいです。人生のヒントにもなるかもしれないと思います」


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■プロフィール■


市川染五郎

いちかわそめごろう。2005年3月27日生まれ。東京都出身。十代目松本幸四郎の長男。祖父は二代目松本白鸚。2007年6月歌舞伎座「侠客春雨傘」で初お目見え。2009年6月歌舞伎座「門出祝寿連獅子」で四代目松本金太郎を名乗り初舞台。2018年1月歌舞伎座 高麗屋三代襲名披露興行にて「勧進帳」源義経ほかで、八代目市川染五郎を襲名。2024年より『鬼平犯科帳』シリーズに出演。2024年に映画『レジェンド&バタフライ』(23年/東映)で、第47回 日本アカデミー賞 新人俳優賞受賞。2026年『ハムレット』でストレートプレイ舞台に初出演・初主演。




駒木根葵汰

こまぎねきいた。2000年1月30日生まれ。茨城県出身。主な出演作は、ドラマ「機界戦隊ゼンカイジャー」「天狗の台所」「25時、赤坂で」など。初舞台『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』がワールド・ツアー中。特別先行版『鬼平犯科帳 本所の銕/密告』が2026年7月10日より、映画『ホーム スイート ホーム』が9月4日より公開。ドラマ「天狗の台所 Season3」が2026年秋放送予定。文化放送「ココは きいタウン1丁目」(毎週土曜19:30-20:00)にてラジオパーソナリティを務める。2026年8月10日・11日に開催されるホリプロ所属の若手俳優・アーティストらによるスペシャルイベント『Horipro Actors Live ~episode5~』に出演。


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■クレジット■
Photo YURIE PEPE
Text 瀧本幸恵
Hair&Make-up 川又由紀(市川染五郎)、吉村健(駒木根葵汰)
Styling 中西ナオ(市川染五郎)、杉山凌(駒木根葵汰)
Costume
市川染五郎: ジャケット ¥88,000、シャツ ¥38,500、パンツ ¥46,200(全てアンセム エー/エンケル 03-6812-9897)、その他 スタイリスト私物
駒木根葵汰: ジャケット ¥1,300,200、インナー ¥246,400、パンツ ¥170,500、スニーカー ¥275,000(全てZEGNA/ゼニア カスタマーサービス 03-5114-5300)

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■MOVIE INFORMATION■

特別先行版『鬼平犯科帳本所の銕(てつ)/密告』

特別先行版『鬼平犯科帳本所の銕(てつ)/密告』

TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー

出演:松本幸四郎 市川染五郎
尾美としのり 本宮泰風 山口馬木也
駒木根葵汰 山田真歩
原作:池波正太郎『鬼平犯科帳』(文春文庫刊)
監督:山下智彦
脚本:大森寿美男
音楽:吉俣良
©日本映画放送

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