髙橋颯 ミュージカル『RENT』インタビュー
1996年にオフブロードウェイで初演された世界中で人気のミュージカル『RENT』が、シアタークリエでは8回目となる公演を、2026年版キャストを迎えて10月15日に開幕する。今回、ドラァグクイーンのエンジェルを演じる髙橋颯(坂口涼太郎とWキャスト)に話をうかがった。心やさしいエンジェルへの想い、そして『RENT』の稽古場での素晴らしい経験。また自身が所属するダンス&ボーカルグループWATWINGにも話が及んだ。

■夕べは映画版『RENT』を観て、感動していました。
「僕は(エンジェルの)オーディションを受けるにあたって映画を観たんですよ。それまでは作品自体は知っていて、観たいなと思いながら観れてなかったんですよね。でも、エンジェルはYouTubeなどに上がっているいろんな映像で、どれも本当にいい表情をしていて。生き生きとしていたり生々しさがあったり。物語を知っていたわけではないのに、すごく惹き込まれたのを覚えています」
■そこからの映画版のエンジェルは、颯さんの目にどう映りましたか?
「すごく美しかったです。当時、ミュージカル『ジェイミー』でジェイミー役を演じていたんですよ」
■ジェイミーは、ドラァグクイーンになりたい高校生の物語でしたね。
「はい。あの経験は宝物です。本当にエンジェルに繋がりましたし、ジェイミーとの共通点がいくつかあったんですよ。ジェイミーが葛藤を乗り越えたおかげで、今はナチュラルに自分らしく居たいと思うことができています。映画版ですけど、きっとエンジェルという人は心が綺麗なんだろうな、人間として美しいんだろうなって感じていました」
■本当にその名のとおり、心やさしい天使ですよね。エンジェルがいるだけで、周りの悩みを抱えた人たちが明るくなれる、素晴らしい存在だなと。
「本当にそう思います。僕もエンジェルみたいに自分以外の人の気持ちを理解したいなと思うことってあるけど、そのやり方がわからなくて。この間、リスペクト講習というのを受けた時に、人の話を聞くことがどこまでできていたかな?って考えてみたんですよ。話を聞いて、もちろん自分だったらどうかな?と考えることもあるけど、それだけじゃ聞けていることにはならない。相手の立場になって聞くということが大事だという話をしていたんですよね。僕はコミュニケーションで悩んだ学生時代だったから、もしかして普通の人がわかる感覚を僕はわかってないんじゃないかな…って思ったりもして」

■エンジェルを演じる上で、そういうことを考えたんですね。
「そうなんです。あとは、今回の役を演じるにあたって、当時の時代背景やHIV陽性がどういう病気なのか?というお話を聞く機会があって。でも、なかなか理解をするのが難しかったりもしたんです」
■確かに、自分が経験していないことを理解するのはなかなか難しいかもしれないですよね。
「それに、人間って、誰しも完ぺきではないじゃないですか。いろんなマインドセットの仕方があると思うし、そのバランスって、話す相手によっていろんなパターンがありますよね。だから、完全に理解するのは難しくても、“こんな気持ちだったんだね…“という仮説をいっぱい立てて、僕なりにエンジェルに寄り添うことができたら…と今は思っているんです」

■なるほど。演出のアンディ・セニョールJr.さんとはどんなお話をされましたか?
「『RENT』は、剝いても剝いても終りがない、剝いても剝いても深掘れる、タマネギのような作品だという例えをされていましたね。あとは、クリエイティブの段階で、これが本当に何になるかわからないままやってるんだけど、でもある時、ポンと、“あ、こういうことか!“って閃いて、花が咲いたように腑に落ちる瞬間が、それぞれのタイミングで訪れるんじゃないかと。それがポップコーンのように、1人が弾けたら周りに化学反応が起こっていって、どんどん弾けて、閃きが増えていく。そんな体験をするんじゃないか?という例えをされていたりしました」
■颯さんもそのような体験を?
「はい。第一幕の中で僕が共感したのは、“Life Support”という楽曲を歌うシーンで。サポートグループのメンバーがそれぞれの病気のことや悩みについて話して、いたわり合ったりするシーンなんですけど、この歌は、心の内側で自分が本当に思っている部分と近しくて、共感できると思っているんです。会話の中では半ばあきらめの気持ちもあるんですけど、でも最後には、“No day but today”という歌詞があって…“あるのは今日という日だけ”という意味なんですけど、“今日という日を精一杯生きよう”と歌っているんですよね」

■本当に素晴らしい歌だと思います。楽曲の話をすると、エンジェルのソロ曲として「Today 4 U」がありますね。
「ダンス曲で、これは落ち込んでいるロジャーを元気づける歌なんですよ。愛をあげて楽しくさせて。その中で僕は、“Today for you / Tomorrow for me”という歌詞がすごいなと思ったんです。“今日はあなたのために 明日は私のために”って…。
■颯さんが今おっしゃったことで気がついたんですけど、RENTの楽曲には、相手を思いやる歌が多いなと。そして、お互いの顔がちゃんと見える歌だなって。エンジェルとコリンズが歌う「I’ ll Cover You」は本当にお互いのために歌っていて、とても愛を感じます。
「僕も「I’ ll Cover You」大好きです…」

■エンジェルと恋に落ちるコリンズ役の石井一彰さんと加藤潤一さんも素敵な方なのでは?
「素敵な方です。恋しちゃいそうです(笑)。加藤潤一さんはゴリさんって呼ばれています。僕がオーディションを受けた時に、ゴリさんは他の作品に出演されていたんですけど、課題曲だった「I’ ll Cover You」を一緒に歌う相手役として来てくださったんですよ。僕はまだオーディションに受かってもいないしやるかもわからない状態でしたけど、ゴリさんは真摯に向き合って歌ってくださったんです。『RENT』への愛も感じたし、楽曲へのリスペクトも感じたし、僕の目を見て歌ったりお話をしてくれることで、自分が本当にエンジェルとしてコリンズの瞳に吸い込まれるような感覚になったのが印象的でした。一彰さんも、いろんな経験をされている方ですけどいっぱい準備もされていて、視野も広くて、自分を大事にしながら周りへの配慮もすごくある方で。それにすごくチャーミングな方なんです。本当に、誰もが愛したくなるし、憧れるだろうし、一緒にいると楽しい存在だろうなって感じました」

■オーディションの最中からすでにコリンズとエンジェルだったんですね! マーク役の鈴木福さんはどんな印象の方でしたか?
「福くんは僕よりも6コも下なのに、人間として成熟した方だなって思いました。現場では1人1人に目を配って、誰が今何を感じているかを感じ取れる方なんです。その配慮がすごく自然なんですよね。かわいい方なのかなってずっと思っていたんですけど、本当にカッコよくて。自分の考えの軸をちゃんと持っているし、面白いことから真剣なことまで、相手の動きにちゃんと乗っかれるふり幅もすごい。僕にとって、福くんが発してくれる言葉やオーラやエネルギーみたいなものが、すごく居心地がいいんです。僕が、ちょっと調子が出ないなって気分の時も彼のオーラに救済されて、がんばるぞ!って気持ちになっています」
■自然と引き上げてくれる方なんですね。
「はい! 全身からマイナスイオンが滲み出ていて。そんな素敵なお稽古場なので、めちゃくちゃ楽しいです」

■颯さんの中のエンジェルも徐々に固まりつつあるんですね。
「はい。前は、自分の中のこだわりや、やりたいことを現実化するのが難しいなって勝手に感じていたんですよ。でも、これは自分じゃないかも?って拒んじゃうような経験だったり、言葉やシチュエーションだったり、表現をしてみることで、結局自分らしさに繋がっていることに気づいたんですよね。やってみよう精神で、いろいろなことを素直に受け入れてみるようになりました」
■そういう気持ちにさせてくれたのは、お稽古の現場の雰囲気だったり、素敵なキャストの人たちだったりなんでしょうか。
「本当にそのとおり…って、今気づきました(笑)。変わろうという新しい自分を自然と受け入れてくれて愛してくれるキャストやスタッフの方たちのおかげです。だから、いろんな自分を受け入れようと思えるようになったんですよね。『RENT』の中で、人間として成長させてもらっているんだなって感じています」

■それは素敵ですね。本番も楽しみです! さて、今年は『RENT』を入れて4本の舞台に出演することになりますね。そういった舞台での経験は、アーティストとしての意識の変化にも繋がっていますか?
「この間、ONE N’ ONLYさんの国立代々木第一体育館でのライヴを生配信で観ていたんですよ。その時にREIくんが、“僕は20代を全部ワンエンに使ったけど、後悔はない”って言ったんです。そして、“僕個人の仕事も、このメンバーでこのグループがなかったらできてないと思う”って。その言葉が、すごく心に刺さったんですよね。僕、今回の『RENT』もそうですけど、こうやって個人のお仕事ができているのもWATWINGがあるからだと思うし。僕、SNSが苦手なんですけど、この間リリイベをやったあとに、初心に還っていろいろと書いてみたりもしたんですよね。自分が再生したような気持ちになりましたし、自分はもっとがんばれるんだなって気づいて、うれしい気持ちにもなりました。こうやってミュージカルの仕事をいろいろとさせていただいている中で、僕としては、WATWINGの場所も広げていきたいという決意を改めてしました。いろんなところに行って、いっぱい練習した自分たちを魅せたいんです。いろんなお仕事をさせていただいていることが幸せだし、いろんなところでの経験や繋がりを、またWATWINGに持って帰ってこれるのが一番だなと思っています」
■最後に10月25日から始まるWATWINGのZeppツアーへの意気込みを!
「がんばります!!!(笑顔)」

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■共通テーマ音楽コラム「MY HEAVY ROTATION SONG」■
WATWING「Gnarly」
僕は時期によって「Runway」とか「HELL FIRE」とかイケイケの曲を聴くんです。この歌は、今のWATWINGの魂だなって感じてよく聴いています。今までは鷹のように羽を広げて獲物に向かっていくギラギラ感が目標達成に繋がると思ってたんですけど、最近は必ずしもそうじゃないんだなって思えてきて。「Gnarly」は、常識にとらわれず波に乗っていこうぜって、軽快に背中を押してくれるんです。
■プロフィール■
髙橋颯
たかはしふう。1998年5月8日生まれ。埼玉県出身。最近の出演作は、主演ミュージカル『アトム』(2025年/トキオ役)、主演ミュージカル『最後の事件』(2026年/アーサー・コナン・ドイル 役)、コブクロ JUKE BOX reading musical(2026年)、主演舞台「鬼滅の刃」(2026年/竈門炭治郎 役)など。6人組ダンス&ボーカルグループ・WATWINGとしても活動中。Zepp Live Tour 2026-2027「love」が10月25日(日) 東京・Zepp DiverCityよりスタート。最新EP「love」が10月21日にリリースされる。
最新情報は公式HPへ
https://official.watwing.com/

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■クレジット■
Photo 山下深礼(PROGRESS-M)
Text 三沢千晶
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■STAGE INFORMATION■

ミュージカル『RENT』
10月15日(木)~11月13日(金) 東京・シアタークリエ
11月20日(金)~11月21日(土) 広島・呉信用金庫ホール
11月26日(木)~11月29日(日) 福岡・博多座
12月4日(金)~12月6日(日) 愛知・愛知芸術劇場 大ホール
12月11日(金)~12月14日(月) 大阪・SkyシアターMBS
CAST:
マーク: 鈴木 福 ロジャー(Wキャスト):木原瑠生 / RIKU(THE RAMPAGE)
ミミ(Wキャスト):Beverly / 遥海
コリンズ(Wキャスト):石井一彰 / 加藤潤一
エンジェル(Wキャスト):坂口涼太郎 / 髙橋 颯(WATWING)
モーリーン(Wキャスト):KIMIKA / 住田愛子(OVAL SISTEM)
ジョアンヌ(Wキャスト):宮本美季 / 塚本 直
ベニー:秋沢健太朗
ミセス・ジェファーソン:COLINA
アレクシー:Miai
ミセス・コーエン:小熊 綸
スティーヴ:聖司朗
ゴードン:田村凌大
ミスター・ジェファーソン:吉岡悠歩
KATSUHIRO(5IN)(スウィング)
脚本・歌詞・音楽:ジョナサン・ラーソン
演出:マイケル・グライフ
日本版リステージ:アンディ・セニョール Jr.
製作:東宝
公式サイト
https://www.tohostage.com/rent2026/
公式X
@RENT_TOHO
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